エピローグ ページ10
.
私が鼻をすすり涙を拭っていると、旅人はちょうどよかった、と言って、パイモンと顔を見合わせ頷いた。
「俺たち、ナヒーダに聞きたいことがあったんだけど……ティアのことだから、本人がいるなら、聞きたくて」
「おれに、聞きたいこと？」
旅人はうん、と首を縦に振る。
「アランムフクンダが、おまえのことを不滅だって言ってたんだ。おまえは、何年生きてるんだ？」
「アランムフクンダ？ きみたち、そんなに昔のアランナラと、会ったのかい？」
「え？ だって、あいつはおまえを友達だって……」
「おれと、会ったこともないのに？ どういう意味だろう」
最初のアランナラ───アランムフクンダは、私を友人だと言ったらしい。会ったことはないけど、アランナラとして、多くのアランナラと仲のいい私を友だと思っている、という意味だろうか。
「イティアメネウは不滅だって言ったんだ。だから、オイラたち、おまえが璃月の仙人みたいに長生きなんじゃないかって思ったんだけど……」
「？ おれは28歳だよ」
どうにも、話が噛み合わない。
アランムフクンダが「イティアメネウは不滅だ」と言った意図はなんだろう。名前が受け継がれるから、それを指して不滅と言ったのか？
「うーん……おれの名前は継承されたものだから、そのことを言っているのかもしれない。二千年前にも、イティアメネウの名を持つ男が存在したみたいなんだ」
「名前が同じなだけで、『不滅』だって言うかな？」
……確かに。
でも私は間違いなく28歳で、それより以前の記憶など、持ち合わせていない。
「ナヒーダ、きみは……何か、知らないか？」
助けを求めてナヒーダに目をやる。
彼女はしばらく視線をうろつかせ、言おうか迷っているようなそぶりを見せた。
「……知っているわ。けれど、
「壊れる？ おれが？ ……大丈夫だよ。おれは、そんなに脆くないつもりだからさ」
壊れてしまうとしても、知りたかった。
知識欲の前では、へらりと笑うことしかできなくて、ナヒーダの不安げな表情を和らげることもできない。
「……あなたが生まれた場所に、真実があるわ。でも、これだけは忘れないで。何があっても、あなたは私の愛し子よ」
花のような笑顔に、また鼻の奥がツンとして。
「何はともあれ、おかえりなさい。ティア」
「うん……ただいま、ナヒーダ」
滲む涙を拭わないまま、笑いかけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 169人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：荒矢式 | 作成日時：2022年11月18日 4時
