目醒め ページ23
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意識が浮上する。
蔦の這う玉座で目を覚ました私は、目の前に広がる光景が信じられなかった。
「起きた！ 旅人っ、ティアが起きたぞ！」
涙目のパイモンが私の顔を覗き込んでいたのである。
「うん、おはようティア。体は大丈夫？」
大量の記憶を流し込まれて少しだけ頭が痛んだが、特に処置してもらうほどではなかったので、頷いてみせた。
「何かを
「……うん。ぜんぶ、思い出した」
私が数千年前の人間であること。
何度も死と再生を繰り返し、俗世を眺め続けていること。
その中で経験した、多くの出会いと別れ。
忘れたままでいたかった記憶、忘れたくなかった記憶。
それに、再生の規則も。
本来なら目覚めてすぐに椅子を使い記憶を復元するのだが、今回に限っては目覚める前にカラムに拾われたから、記憶も失われたままになってしまったようだ。
記憶が戻ったことで、全てが繋がった。
ナヒーダがあんなにも私を止めたのは、今までに何度もそうやって死んできた私を見ていたから。
鍾離が私を泊めてくれたのは、私が『名を継ぐ人間』だからではなく、『イティアメネウ』その人だったから。
普段は誰とも会話しないらしい魈が私と言葉を交わしてくれたのも、私がかつて彼と出会ったことがあるから。
「大丈夫？」
旅人は念を押すように、もう一度そう尋ねる。
首を縦に振って肯定とすると、彼は眉をひそめた。
「震えてる。それに、体が熱いよ」
彼の手がそっと私の腕に触れる。そこでやっと自分が震えていることに気付き、私は自嘲気味に笑みをこぼした。
人間のちいさな脳では数千年の記憶など受け止めきれない。容量を大幅に超えたから、私の体は発熱しているのだろう。
「問題ない……今までのおれは、これに耐えてたんだ。再生と形容されている以上、おれは以前と変わらない肉体を持っているはず。なら、耐えられない道理がない」
この発熱はおそらく一時的なもので、記憶が馴染めば消えるもの。私はそう信じるしかなかった。
「でも、ひどい顔色だぞ。アアル村に戻って、少し休もうぜ」
旅人はパイモンの提案に賛成し、私の脇の下に体を滑り込ませた。背負われて帰るのは、ちょっと格好悪い。
「歩けるよ……」
「おまえな、フラフラなんだぞ。大人しく背負われとけって」
「パイモンの言う通りだ」
「うぅ……」
実際、酒に酔ったときのように足取りがおぼつかない。
仕方なく肩を貸してもらい、アアル村に戻った。
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作者名：荒矢式 | 作成日時：2022年11月18日 4時
