【男主】赤砂の学者Ⅱ【原神】 (ページ21)

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　或る少年ページ21

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　草神は力を使い果たし幼子の姿になり、彼女を見つけた教令院の賢者たちによってスラサタンナ聖処に幽閉された。

　男は憤った。

『赤子同然の知識しか持っていなかったとしても、それでも、この国の神だろう！賢者よ、狂ってしまわれたか！』

　賢者たちは聞く耳を持たない。

　国民には以前の草神の遺産、アーカーシャ端末が配られた。

　男はそれを着け、囚われた千樹の王を救い出すために東奔西走した。内戦を止めるべく走っていたときよりも、ずっと必死になって疾走し続けた。

　一度目はスラサタンナ聖処に忍び込んだ。
　三十人団に捕まって殺された。

　二度目は彼女を捕らえる障壁を爆破しようとした。
　三十人団に見つかって殺された。

　三度目は賢者の術式を改竄(かいざん)しようとした。
　マハマトラに捕らえられて殺された。

　数百回に及ぶ救出作戦は、ことごとく彼らに露見していた。

　ついには円環がバレたのか、再生してすぐ教令院に囚われることになり、多くを牢で過ごした。輪転の間の予備鍵となる石板は祭司の家系から略奪されたらしい。

　記憶を手に入れ、教令院から逃げていたあるとき、一人の美しい少年と出会った。

　彼はアアル村に身を潜めている男のもとを訪れては、興味深そうに男の話を聞いた。

『幾度となく再生し、輪廻を繰り返していると聞いたが、それは本当か？』

『……知らんな。誰に聞いた？』

『禁書区の本に書いてあった』

　まだ若い学生だというのに、禁書エリアに入れるほどの権限を持っているらしい。あるいは、勝手に侵入したか。

　男は少し考えた。

　今、円環のことを知っているのはおそらく教令院の上層部だけ。ただの学生に、悟られるわけにはいかない。

『生憎だが、その本はボクのことを何も知らないようだ。人は死ぬと境界を超えてあの世へ行く、知らないわけではないだろう？輪廻を繰り返すなどと、夢物語に過ぎん』

　男は静かにかぶりを振り、少年の言葉を否定した。

『なら、なぜ教令院に追われている？』

『学術犯罪に手を染めたんだ。君が気にする必要はない』

『禁書には、「イティアメネウ」が円環者の名だと書かれていた。お前の名はイティアメネウだろう』

『そうだが、ボクの名は彼にあやかって付けられたものだ』

『しかし円環者の名は民間に伝わっていないし、禁書区に侵入しなければ名前を知ることもできない』

　少年は引き下がらなかった。

『認めろ。お前は円環を繰り返している、そうだろう？』