伝説任務 −尾咬蛇の章 第1幕− ページ15
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約束の日だ。私が生まれた場所へ行き、全ての真実を知る。
旅人は忙しくしている身でありながら、私の個人的な頼みを聞いてくれた。だって私は貧弱な学者だ。一人で砂漠に赴いてプライマル構造体にやられでもしたら、笑えない。
待ち合わせは午前十時、キャラバン宿駅のカフェ。
時間より少し早く着いた私は、ミルクと砂糖をたっぷり入れたコーヒーを飲みながら朝食をとっていた。今日はマサラチーズボール。二日酔いにはコーヒーとチーズが効く。
「あれ？ ティア、もういたのか」
「おはよう。早いね」
旅人がふよふよ浮いているパイモンと姿を現すと、カフェの客たちが一斉に彼らを見る。旅人はスメールでは既に有名人になってしまったようだった。
「おはよう、二人とも」
私はコーヒーを飲み干し、最後のチーズボールをパイモンにあげた。彼女は目を輝かせてそれを頬張る。
「それで……んぐっ、準備はできてるか？」
「とっくにできてるさ」
私は立ち上がり、旅人の背中をぐいぐいと押した。会計を済ませて外に出れば、防砂壁が聳え立っているのが見える。
「空がいれば安心だよ。付き合わせて悪いけど、よろしくな」
◇
アアル村には、優しく美しいガーディアンがいる。
「お久しぶりですね、ティア。それに旅人さんも」
彼女と私は長い付き合いだ。
私が砂漠に赴くときは、いつもアアル村に寄って準備を整える。その際、キャンディスは私のために最善を尽くしてくれるのである。
宿の手配、食事、それとアアル村を出るまでの護衛。
物腰の柔らかい彼女は私にとってそばにいて安心できる人物の一人で、だから私は、彼女に頭が上がらないところもある。
「また『帰省』するんですか？ お気をつけて。あなたが怪我をすると、ガンダルヴァー村まで行くキャラバンを見つけなければいけませんから」
「ガンダルヴァー村？ ビマリスタンじゃなくてか？」
パイモンが不思議そうに首を傾げる。
「ふふっ、なんでもガンダルヴァー村に、贔屓のお医者さんがいるみたいですよ」
「キャンディス……！」
「ガンダルヴァー村に医者？ 誰のことだ？」
慌てて彼女を止めたが、時は既に遅く。
旅人は理解したのかニヤニヤしながら私の肩に手を置いてくる。ちょっと、そういう意味じゃないんだけど！
「ティナリのことだよ……彼は医者じゃないけど、怪我によく効く軟膏を作るのはスメールで一番上手い」
恥ずかしかったけどちゃんと説明して、砂漠に向け出発することにした。
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作者名：荒矢式 | 作成日時：2022年11月18日 4時
