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時計の針が頂上を指したのを確認して、メッセージアプリを起動させる。
連絡先を交換してから４年目、あの頃より背も伸びて大人っぽい顔つきになった彼のトーク画面を開いて、『お誕生日おめでとう』と一言メッセージを送った。
今日は、大人気アイドルグループの一員であり、大学時代の同級生であり、彼氏である新くんの誕生日。本当なら日付が変わる瞬間から同じ空間で過ごせたら良かったけれど、私は明日日勤だし、新くんは盛大なパーティーがあるんだとか。
彼が所属するグループは、誕生日や季節の行事を大切にしていて、桜の申し子な彼のお誕生日も例外ではない。
だから、彼女の私がお祝いするのは少し先。ちょーっと残念だけど、もう慣れた。仲間と楽しそうに過ごす新くんを見るのは好きだし。
今何してるんだろう、お祝いはいつもその日の夜だけど、葵くんたちとのんびり過ごしてるのかな。未だ既読の付かない画面を見てぼんやり考える。そろそろ眠る時間だけど、出来れば電話して、声でおめでとうって言えないかなぁ、なんて望みが捨てきれなくて、返事が無いか確認してしまった。
……もしかして、
「もう寝ちゃった？」
有り得る。いちご牛乳と睡眠をこよなく愛するところは出会った頃から、いや出会う前から変わらない。……まぁ、いっか。明日、日付が変わる前に声が聴けたら。
少し寂しく思いながら部屋の電気を暗くする。今週末、私の休みに合わせて家に泊まりにくる新くんに、どんなお祝いをしようか。そんな事を考えながら寝返りをうつと、目の前のスマホの画面が明るくなった。
新くん、かな。
そろそろとスマホを確認したら、新くんからのメッセージ。
『卯月新、24歳です』
『今陽にお祓いをお願いしてる』
……お祓い？ 今年厄年だったっけ？
首を傾げていたら、トーク画面が着信画面に変わる。
「もしもし？」
『Aーッ！ 聞いてよ、陽くんがひどい！ 冷たい！』
わーわーと喚く新くんの声と一緒に、『うるせぇ。ホラー観るやつの方が悪い』と陽くんの声が聞こえる。
察するに、新くんは幽霊とかホラーの類が苦手なのに観てしまったらしい。ホラー映画を。
何してんだか、と呆れながら会話を聞いていると、『お願いします〜陽さま〜』とまた違う声。今日もツキノ寮は楽しそうだ。
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