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思えば、2人で手持ち花火をするのは初めてだ。
私は、手持ち花火自体するのは久しぶりで。
小学生の頃は、毎年お父さんが花火を買ってきてくれてたなぁ。
中学、高校と進学していくにつれて、部活や友達付き合いでそういった時間も無くなっていった。
最後に花火をしたのはいつだったっけ。
新くんはさっき、『今年はまだ花火をしていない』って言ってたけど、メンバーの皆さんと毎年してるのかな。
そんな事をぼんやり考えながら、勢いよく飛び出る火花を見つめる。
新くんはというと、両手に持った花火をブンブン振り回している。
…なんだか小学生みたい。
新くんの小学生時代って、どんな男の子だったんだろう。
楽しそうに花火をする横顔を見ながら、そんな事を思った。
「A！」
「なぁに？」
手に持っていた花火が消えて、バケツに入れた時、新くんが私の名前を読んだ。
振り向くと、「みろ、サイン描けるぞ」と、花火に火をつけた新くんが楽しそうに腕を動かす。
そういえば、花火文字とか、そんなのが流行ってるんだっけ。
スマホのカメラで動画を撮ってみる。
普通の動画だからか文字には見えないけど、確かに「うづきあらた」といつものサインを描いてるようだった。
そこからは、2人で花火で文字を書いてしりとりしたり、何を書いたか当てあったり。
新くんの買ってきた花火は、2人でするには少し量が多く。
そんなふうに贅沢に遊んでも、なかなか中身は減らなかった。
・
少し休憩しようか、って、手に取ったのは線香花火。
静かだけど綺麗な火花を落とさないように、慎重に花火を持つ。
正面で、火花を見つめる新くんはとても綺麗で、つい見惚れてしまう。
「…なんだ？」
視線を感じたのだろう。
新くんが顔を上げて、目が合った。
びっくりした私は思わず手を揺らしてしまって、大きくなっていた火の玉がポトリとアスファルトに落ちる。
「あ」
「…落ちちゃった」
バケツの中に花火を入れると、新くんが「何かあった？」と私を見上げた。
「ううん、なんにもないよ」
「そうか？」
「うん。…ね、新くんって、どんな小学生だった？」
「小学生？んー…普通の小学生だったぞ？
いつも葵と居たかな。放課後は葵と、たまにちーちゃんと遊んだり」
新くんが、懐かしむような優しい声でそう教えてくれる。
ぽとり、と新くんの火の玉もアスファルトに落ちた。
2人でまた線香花火に火をつけて、火の玉を見つめる。
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