四十一話 ページ43
理由のわからない来訪をいつものと思えるくらいには、リィサはイルミが自分のところを訪れることに慣れてきていた。
なんでかは知らないけど、イルミはここ最近、営業時間外にも高頻度でやってくる。
リィサが理由を知らないだけで、イルミ本人には理由がある……理由を知ってるんだと思ってた。
でも、この反応。
『もしかして、イルミもよくわかってないの?』
「うん。最近リィサの顔を見る機会が多いから、習慣になってるのかな」
なんだその習慣。いらない。
リィサがじとーっと見つめると、イルミが「何?」と言った。
自分の発言に対して何の疑問も抱いていないような様子に、思わずため息が出た。
そしてふと、からかってみようという悪戯心が鎌首をもたげる。
『イルミってそんなに私に会いたいんだ』
にまにましながら言い返す。するとイルミは、無表情のまま愉快げに目を細めた。
「……会いたくなかったら来ないでしょ」
『それはごもっとも』
確かに会いたくなかったらわざわざ来ないか。納得し、仕事机で開いていたスケジュール表に目を落とす。
そうして目を通しながら一息ついて、リィサは内心で頭を抱えた。
──薮蛇!
会いたかったことは否定しないって、え、私に会いに来てるの!?時間外に何か用事があるとかじゃなく!?
いや、まぁ、いつも仕事の話もしないでご飯食べるかぼーっとするかして帰っていくけど。
どういうこと……!?何で私に会いに来てるの!?
大混乱の内心とは裏腹に、スケジュール表の今日の予定を読み終える。
イルミはその間、とても静かだった。視線は感じるから帰ったとかではない。
リィサは深く息をついて混乱しきりの思考をなんとかリセットし、立ち上がった。
『今日は何でも屋の仕事があるから、店は留守にするよ』
「え」
『えってなに』
「仕事ないと思ってた」
『すごい失礼』
会話しながらリィサは、イルミに下心とかはなさそうだなと思い直す。
会いたかったとかそういうこと言わなさそうだから混乱したけど、よく考えなくてもこの人が自分を恋愛的な目で見ることはないはずだ。
ちょっと自分が特別みたいな言い方されたり、会いたかったと思っていることを仄めかされて勘違いしそうになるけど。全部綺麗な顔面が悪い。
『……イルミ、会いたかったとかそういうのは何とも思ってない女性に言わない方がいいよ。勘違いされるの、いやでしょ』
今のうちに伝えておこう。そう思ってると、イルミは首を傾げた。次いで口が開く。
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こめこめコメダ(プロフ) - 続き楽しみですっ……めっちゃ面白いです、ありがとうございます!!!!! (2023年3月19日 16時) (レス) id: b8ad08ce24 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - クロさんの作品大好きです!更新ありがとうございます! (2023年3月16日 22時) (レス) id: 1984ade8f5 (このIDを非表示/違反報告)
腐腐腐 - めっさ好きです!この作品に運命(?)を感じました笑続き楽しみに待ってます! (2022年5月22日 22時) (レス) @page12 id: c7cac8184e (このIDを非表示/違反報告)
吸血鬼少女 - すっごい面白い!イルミ大好きなので、読んでて凄い楽しいです。更新いつまでも待ってます☆ (2021年5月2日 16時) (レス) id: 97d3b05e39 (このIDを非表示/違反報告)
フェル - めちゃくちゃ面白かったです、続き楽しみにしてます! (2021年3月20日 17時) (レス) id: d6649fea10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2021年2月20日 1時