三十四話 ページ36
暗殺対象が滞在してるホテルだと察してギョッとする。
屋根の上を走ってた間に護衛に針を投げてたみたいだけど、もしかして……
『……このまま仕事する気?』
「違うよ、今夜殺せって依頼だったって言わなかったっけ」
『言ってたけど』
言いながら、イルミがリィサを降ろす。地に足がついている安心感に息をつく暇もなく、イルミが歩き出した。
慌てて後を追って、ホテルのフロントに入る。
「ヒソカがどういうつもりなのか知らないけど、お前をあのまま帰して何かあるのが癪だから執事に店まで送らせる。いい?」
いい?と言われてもよくわからない。情報がよく飲み込めない。
リィサがこめかみを揉んで思考を纏めている内に、イルミはさっさとフロントに二言三言話しかけてエレベーターに歩いていった。
仕方なしに一緒に乗る。
『えーと……そもそもあの道化師、なに?』
「快楽殺人鬼」
『そんなのをビジネスパートナーにしてるの……?』
「不本意なんだよこっちも。腕は確かだから」
イルミが言うのなら本当に腕は良いんだろうなと思う。少し観察したところ、戦闘センスはありそうだったから。
あのしつこいナンパからして、性格にはとても難がありそう、というか難しかなさそうだけど。
『要するに、私は狙われてたってこと?』
殺気は感じなかったけど。そう言外に含めば、イルミは視線をエレベーターの扉に固定したまま答えた。
「さあね。あいつの考えてることは俺にはわからない。俺の知り合いにちょっかいかけたかっただけかも」
『そんな適当な……』
扉が開く。イルミの後に続いてリィサもエレベーターから下りた。
***
二人が絶をして、少しした後。
「……見失った、か◆」
屋根の上でヒソカは愉快げに呟いた。
イルミのビジネスパートナーだなんて、どんな子だろうとこっそり追いかけてみたら予想以上のものを見てしまった。
「あのイルミが、ボクから遠ざけようとするなんて、ね……◆」
それほどの何かが、あの少女にはあるのだろうか。
二人が分かれた頃を見計らって個人的に接触しようと思ってたのだが、これは嬉しい誤算だった。
イルミがリィサと共に逃げたのは、実のところ悪手だったと言える。ヒソカの好奇心を刺激してしまったのだから。
わざわざ自分の手でヒソカから遠ざけようとする相手。気にならないはずがない。
ともあれメインディッシュの味わいを深めるかもしれない、大事な要素だ。
じっくり、じっくりと、見極めていかなくては。
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こめこめコメダ(プロフ) - 続き楽しみですっ……めっちゃ面白いです、ありがとうございます!!!!! (2023年3月19日 16時) (レス) id: b8ad08ce24 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - クロさんの作品大好きです!更新ありがとうございます! (2023年3月16日 22時) (レス) id: 1984ade8f5 (このIDを非表示/違反報告)
腐腐腐 - めっさ好きです!この作品に運命(?)を感じました笑続き楽しみに待ってます! (2022年5月22日 22時) (レス) @page12 id: c7cac8184e (このIDを非表示/違反報告)
吸血鬼少女 - すっごい面白い!イルミ大好きなので、読んでて凄い楽しいです。更新いつまでも待ってます☆ (2021年5月2日 16時) (レス) id: 97d3b05e39 (このIDを非表示/違反報告)
フェル - めちゃくちゃ面白かったです、続き楽しみにしてます! (2021年3月20日 17時) (レス) id: d6649fea10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2021年2月20日 1時