二十七話 ページ29
「……なに、そんな顔して」
そんなにこの呼び方嫌だったの?と聞いてくるイルミにリィサはゆるく首を振った。
その拍子にぽろりと涙がこぼれ落ちる。目の前のイルミがぎょっとしたのが気配で感じ取れた。
『違う……ちょっと、懐かしくて』
「懐かしい?」
『両親が、私を褒めたり甘やかす時にリィって呼んでたの。だから』
袖を目元に当てる。布が涙を吸って湿った。
多少はましになったのを感じて手を降ろすと、もうイルミの表情は無表情に戻っていた。
『ごめん、取り乱した』
「いいよ」
『呼び方はなんでもいいけど、リィサって呼んでくれると嬉しい』
「うん」
熱を持った瞼を冷やすように軽く手で風を送る。まさか、泣いてしまうなんて思ってもみなかった。
両親を失ったのはもう随分前になるのに、呼び方一つでこんなに動揺するなんて。
『さ、次の依頼の話をしようか。あるんでしょ?』
「うん。次はちょっと遠いとこのやつなんだけど」
吹っ切れたと思っていたけど、忙しい毎日に埋もれていただけでまだ悲しい気持ちは残っているのかもしれない。
或いは、イルミの存在によって蓋をしたはずのあの頃の思いが甦ろうとしているのかもしれなかった。
──イルミ・ゾルディックは、リィサの両親の仇だ。
***
両親の死を知ったあの日、リィサは復讐を決意した。
何がなんでも両親を殺した奴を殺してやると。そのために、知識を求めた。
犯人の情報を少しでも求めた。殺すために念の修行をひたすらこなした。
そうする内に、いつの間にかリィサは発が使えるようになっていた。
現在までに起こった事象であれば何でも知ることができる念能力。
強制的に絶にもなるし、一度にたくさんの情報を見ると脳に負荷がかかるため自由自在にあれこれ見られるわけではないが、両親を殺した相手を見つけるのには充分過ぎるくらいだった。
そうして初めて念を使ってわかったことは、リィサの父が勤めている会社の悪事の証拠を握ってしまい口封じで殺されたこと、母は巻き添えだったこと。
それから実行犯はゾルディックの人間であることと、そのあとで父の会社の社長が強盗の仕業に見せかけるために家を荒らしたことだった。
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こめこめコメダ(プロフ) - 続き楽しみですっ……めっちゃ面白いです、ありがとうございます!!!!! (2023年3月19日 16時) (レス) id: b8ad08ce24 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - クロさんの作品大好きです!更新ありがとうございます! (2023年3月16日 22時) (レス) id: 1984ade8f5 (このIDを非表示/違反報告)
腐腐腐 - めっさ好きです!この作品に運命(?)を感じました笑続き楽しみに待ってます! (2022年5月22日 22時) (レス) @page12 id: c7cac8184e (このIDを非表示/違反報告)
吸血鬼少女 - すっごい面白い!イルミ大好きなので、読んでて凄い楽しいです。更新いつまでも待ってます☆ (2021年5月2日 16時) (レス) id: 97d3b05e39 (このIDを非表示/違反報告)
フェル - めちゃくちゃ面白かったです、続き楽しみにしてます! (2021年3月20日 17時) (レス) id: d6649fea10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2021年2月20日 1時