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十九話 ページ21

『まぁ、わからないんだったら、今日みたいにご家族や知り合いの買い物についていくとかも手だと思うよ。貴方、結構買い物に付き合うの上手だし』
「そう?」
『否定とかがないから話しやすいんだよね。息抜きは……何て言うんだろう、自分に対する肯定感が大事だから』

リィサの言葉に、イルミは視線を下げて考えこんだ。
理解はできないかもしれないけど、そういうものなんだと認識してもらえたらいいと思う。

会話が落ち着いたタイミングでふわりと頬を風が撫でた。
つられるようにして通りに視線を向けると、家族連れが楽しそうに歩いているのが目に映った。

父親の両手には紙袋が下がっており、かなり重そうだ。それでも楽しそうに母親らしき人物と言葉を交わしていて、幸せな家族そのものの光景が広がっている。
リィサが微笑ましく見守っていると、不意に母親と繋いでいた手をすり抜けて少年が走り出した。

早く行こうよとでも言っているのか、横断歩道の手前で足を止めて両親を振り返る少年。
再び両親に背を向けて横断歩道に踏み出した少年の向こうから異様に速度の早い車が来るのをリィサは見た。

『っ間に合え!』

椅子を蹴飛ばして立ち上がる。フェンスを飛び越え、地面を蹴り、真っ直ぐに少年のもとへ走る。
車はもうすぐそこだ。少年を抱えて逃げるのは間に合わない。

リィサは咄嗟に少年を抱き込むと、衝撃に備えて身を丸めた。

『──』

衝撃が、こない。

いつまでたっても。

不思議に思ったリィサが恐る恐る車の方に目を向けると、何故かイルミの背があった。

『え……』
「なにしてんの、早くどきなよ」

イルミに告げられ、慌てて少年ごと歩道に避難する。
泣き出す少年を抱えたままぼんやりとイルミを振り返ると、彼は車から手を離して──なんと、片手だけで車を止めていた──こちらにやってきた。

「……お前って」
「すみません、息子を助けていただきありがとうございました……!」

イルミが言いかけた話が気になったものの、少年の親が走ってきた。
まずはそちらの対応をしようと思い、リィサも少年を降ろして向き直る。

「あの、なんてお礼をしたらいいか……」
『あー…お礼は私じゃなくて、彼に。彼が居なかったら跳ねられてたんで』
「え」

なんでこっちにふるのかと言いたげなイルミの手をふと見やると、リィサの荷物が下がっていた。

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設定タグ:ハンターハンター , イルミ , H×H   
作品ジャンル:恋愛
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こめこめコメダ(プロフ) - 続き楽しみですっ……めっちゃ面白いです、ありがとうございます!!!!! (2023年3月19日 16時) (レス) id: b8ad08ce24 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - クロさんの作品大好きです!更新ありがとうございます! (2023年3月16日 22時) (レス) id: 1984ade8f5 (このIDを非表示/違反報告)
腐腐腐 - めっさ好きです!この作品に運命(?)を感じました笑続き楽しみに待ってます! (2022年5月22日 22時) (レス) @page12 id: c7cac8184e (このIDを非表示/違反報告)
吸血鬼少女 - すっごい面白い!イルミ大好きなので、読んでて凄い楽しいです。更新いつまでも待ってます☆ (2021年5月2日 16時) (レス) id: 97d3b05e39 (このIDを非表示/違反報告)
フェル - めちゃくちゃ面白かったです、続き楽しみにしてます! (2021年3月20日 17時) (レス) id: d6649fea10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:クロ | 作成日時:2021年2月20日 1時

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