１６２、誘導尋問 ページ3
「フェイタンの念を、どうやって上書きした？」
ワイングラスを持つ右手をくるりと傾け、内にある赤い液体を揺らして目を細めるクロロが言った。その言葉に、起きていた幾人かの視線が此方に集中するのを感じる。
「……フェイタンの意識と私の意識を繋げて、自分の意思で動け、という命令を聞くように操っただけよ」
「つまり、フェイタンはお前の支配下にあるわけだ」
「そうなるわね。でも、彼をどうこうする気はないわよ？」
「理解しているさ。ところで、お前は知っているか？」
──操作の念は上書きが不可能なんだが。
「──っっ……」
思わず体を固め、息を詰めてしまい、しまった、と思う。これではそうだと肯定しているのと同じ。
クロロもそう感じたようで、フッと笑い出して顔を逸らし肩を揺らしている。
「すまん、随分素直な反応をするなと思って」
「……私としてはあまり笑い事ではないのだけど。誘導したわね」
「どうしても知りたかったからな」
少しだけ睨めば、余裕そうな笑みを返される。本当に意地が悪い。
「知って、どうしたいの」
「どうもしないが？」
どうもしない……本当に？ 思わずまじまじと見つめれば、クロロは持っていたワイングラスを置いて私の髪を撫で始めた。
まるで慈しむような手つきに警戒が緩む。
「ノブナガの治癒をした上、フェイタンまで助けてもらったんだ。借りがある以上お前を害する気はないさ」
「団長の言う通りよ。受けた恩を仇で返すほど私達は恩知らずではないもの」
ね、と笑顔で首を傾げるパクノダに、シャルナークやマチが頷き返す。
その表情に嫌悪や疑惑といった色はない。……良かった。
「ところでよ。フェイタンは今、どういう状態だ？」
「俺もそこは聞いておきたい。どうなんだ？」
フィンクスの質問に振り返れば、缶を握り潰してゴミ箱に投げたところだった。
確かに説明していなかったし、仲間としては他人に操られたままは嫌だろう。
「ええと……上書きしたけれど、フェイタンにかけられてる念は消したわけではないの。あの時は彼を起こすことに集中していたから」
「起こす？」
「私の能力が届くほど浅い表層に誘導した、というのが正しいかしら。私の呼び掛けに他の人の念で覆い隠されてたフェイタンの自我が反応することで、反応を示した彼の意識に能力をかけることが出来たの」
だから厳密には念を解除したり、取り除いたというわけではない。あくまで上書きしただけなのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 333人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユウ - 一気読みさせてもらいました。応援してます。ヒソカ落ち希望です！ (9月18日 1時) (
レス) id: 9180eb740d (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 更新待ってます！！続きがとても気になります！！イルミ落ちがいいです！ (2022年6月6日 0時) (レス) @page32 id: b76b8db090 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - 作品読ませていただきました！！とても面白くてこのシリーズ大好きです！もし、この作品がまだ更新されるのであれば、気長に待ってます！頑張ってください！！ (2021年1月30日 18時) (レス) id: f151b0ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 初めて作品を読ませていただきました！私はこのシリーズがとても大好きになりました！もし、作者様がこの作品を覚えているのであれば更新されるのを楽しみに待っています！ (2021年1月1日 21時) (レス) id: 5e84d40654 (このIDを非表示/違反報告)
maki(プロフ) - このシリーズ大好きです！更新待ってます！ (2020年3月24日 18時) (レス) id: 94544c805e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クロ | 作成日時：2019年9月4日 4時
