秘密の存在４【H×H】 (ページ9)

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１２９、手合わせの場へページ9

「それでだ。お前と戦いたいと言ってる奴がいてな、そいつと戦ってもらう」

クロロの言葉に私は眉を寄せる。誰がそう言ってるのかはなんとなくわかる。
先程から本人が──昨日と変わらず──強い視線を向けてくるから。柱の影に紛れるようにして立っているフェイタンなのだろう。

「戦う意味も理由も見いだせないから遠慮したいのだけど」

「そうか、残念だ。……パクノダ」

あっさりと諦めたクロロは、ふむと一つ考えてから団員を呼んだ。
返事をして近付いてくるパクノダに視線を移すと、横から再び声がかかる。

「俺たちは全員念を習得していてな、パクノダも勿論使うことが出来る」

話が、飛んだ。いや飛んではいないのだろう、けれど突拍子な話に内心で首を傾げる。念能力での戦いを見たかったのだろうか。
何故その話になったのだろうという疑問の答えは、すぐに語られた。

「パクノダは特質系でな、触れた相手の記憶を読み取ることができる」

「……それで？」

低い私の声と同時に、広間の中を少しの風が吹き抜けて埃が舞う。
警戒が質量を持って溢れ出た。現象を言葉にするならそれが一番正しい表現だろう。獣性を使ってしまったのかと錯覚し焦ったが、纏が少し揺らいでいたのが原因だったようだ。
団員たちから一斉に警戒されるのを肌で感じ、すぐに揺らぎを正してクロロに視線を移す。

「戦えと。そう言うのね」

「そうだ。お前に選択権はない」

「……わかったわ」

「あと観戦者もいるが気にするな」

渋々了承すると、広間で座っていた全員が立ち上がって入り口まで移動していく。観戦するのは彼らなのだろう。

「移動するの？」

「以前別の拠点でノブナガとフェイタンが手合わせをした時にね、拠点を潰しちゃったのよ。それからは手合わせとかする時は必ず移動することにしてるの」

「そうなのね」

私の問いかけに近くにいたパクノダが答えてくれた。確かにここでやったら壊してしまうかもしれない。
行きましょうと言われてパクノダの後をついていく。紹介された人全員が移動を開始する様子に、観戦して面白いものでもあるのかと思ったけれど。

「あなた、随分と素直に私と話してくれるのね。さっきの警戒ぶりが嘘のようよ」

「記憶を読まれるのは嫌だけれど、貴女自体が嫌ってわけじゃないもの」

それに能力を先に明かしたということは、本当に読む気はあまりないのでしょう。そう言えば、パクノダは少し驚いた顔をしてからころころと笑った。