140、参謀は疑問を抱き ページ20
「あんま情報出てないんだけど、裏社会で”影法師”って呼ばれてる奴らしくて」
「影法師い?」
「単語としては人の影、影絵という意味だな。念能力者か?」
首肯すると、団長はふむと思考を一巡させてから頷いた。
「いいだろう、交代を許可する」
「オーケー、連絡しとく。明後日フェイタン来るかなあ」
「なんだかんだ根は真面目だからな、仕事と言えば来る」
「だといいけどね。ちょっとマチに知らせてくるよ」
通路に向かって歩きながら携帯を取り出して画面を開けば、受信履歴に新しいメールが入っていた。コルトピ、シズクは来るようだ。フランクリンもシズクと一緒に来るらしい。ボノレノフは暫く忙しいらしい。
そして、珍しくヒソカからも返信が来ていた。
”楽しそうだけどボクはちょっと探し人がいるから、いけないな◆”
ヒソカが率先して探すというと、思い当たるのは奴が気に入ってるらしいソフィアくらいしかいない。
(うーん、気になるけど変に聞いて当たりだったら何故教えなかったのかって思われそうだしなー)
頑張ってね、と当たり障りのない文章で返信し、マチの部屋の扉をノックする。
返事が聞こえたのを確認してから入れば、マチはソフィアが着ていたミッドナイトブルーのドレスに鋏を入れていたところだった。
「なんか用? あの子なら今は風呂に入ってるから、あいつに用があるんなら後にしな」
「いや、マチに用があるんだけど……えーと、それ何してるの?」
「何って、リメイクだけど」
「どうして?」
ドレスが縫い直しするものでないことはマチだってわかってるはずだし、てっきり断って処分するかと思ったんだけど。そういう意味を込めて聞けば、マチはやっぱりと言いたげに溜め息をついた。
「アンタもそう言うと思ったよ。アタシも縫い直すもんじゃないって教えてやったんだけどさ、貰い物だから着れるようにしたいんだと」
「……言えば幾らでも同じようなの盗ってこれるのに」
「ま、盗ってきたところで着る機会なんかないけどね、街中でこんなの着てたら自分はカモだって言ってるようなモンだし」
「確かに。あ、それで用件なんだけどさ」
作業の手を止めずとも聞いているマチに交代の件を伝えながら、なんとなくもやもやした思いに内心で首を傾げる。
仕事のために買っただけのドレスなんて処分すれば良かったのに。大した思い入れもないんだし。
そんな考えがぐるぐると回って、俺はなんとなく落ち着かない気分になった。
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作者名:クロ | 作成日時:2019年6月1日 15時