139、蜘蛛は彼女に魅せられる ページ19
【シャルナーク side】
マチの案内についていくソフィアを見送ると、不意に団長がウボォーに声をかけた。
「気に入ったか、ウボォーギン」
その言葉が誰のことを指しているかなんて聞かなくてもわかる。ウボォーも察したようで、顎に手をやっていつになく楽しげな笑みを浮かべた。
「まあな。フェイタンの速度を上回る女ってのも珍しいが、頭突きで決着つけるっつーのも中々面白え」
確かにあの服装のままあれだけの動きが出来る女は中々いない。戦いを好むウボォーなら気に入る人材だ。
けど、それだけでただの他人に気を許すほど俺らは優しい世界で生きてない。だからウボォーが肩に乗せたときは本当に驚いた。まだ未知数の相手を首に近付けるなんてあまりに無警戒すぎたから。
「なんつーか、言葉にしづれえけどよ。ありのまま、って感じがすんだよな」
「ありのまま?」
「初めて見たときは喋りとか見た目からして生意気そうな女って印象が強かったんだがな。気配が……なんつーか……透明に感じるというか」
表現を探り探り言葉にし、がしがしと頭を掻いてウボォーが言う。
「ありのままだ、あいつ。何もかもを自分の心で見てやがる。俺らを悪人と決めて見てるわけじゃねえんだよな、人間として見てるっつーか……」
「敵意も害意も感じない、か?」
「ああ、まあそうだな。あと見てて心配になっちまうぐらい無防備だな」
ウボォーの感じるソフィアの印象と、俺の感じるソフィアの印象が一致した。
マチも普通に接してたから、彼女が俺たちに対して敵意を抱いてないのはほぼ証明されたとして。
「ん〜、俺も欲しいなとは思うけど空き番ないしなー」
「あいつも入る気はないだろう」
「だよねー」
ふと、フェイタンが挑発した直後のソフィアの様子を思い出す。
思わず鳥肌が立ってしまう程の存在感。長い紫の髪がふわりと舞う光景は美しくて。紅い瞳が楽しげに煌めく様はただただ艶美だった。
彼女はこれまでに俺が見たどの芸術品よりも魅力がある。そのくせ強いとなると、うちの団員はほぼ気に入るだろう。
というか団長は既に気に入ってるみたいだしヒソカのお気に入りらしいし。
なんだかちょっと癪なのは押し隠すとして、そんなことより明後日のことだ。
「団長、明後日のだけどマチ外してフェイタンにしていい?」
「理由は?」
「さっきウボォーにも言ったけどさ、ちょっと厄介な奴がいるみたいなんだよね」
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作者名:クロ | 作成日時:2019年6月1日 15時