88、蜘蛛は移動を開始する ページ8
【no side】
闇夜に包まれた廃墟の中で、奇術師は見えているかの如く瓦礫を避けて歩く。
目指す先は、現在この廃墟に滞在している男の居場所。いつものように、広間にいるはずだ。
「ヒソカか」
足を踏み入れた瞬間、声がかかる。
「やあ、クロロ◇」
「試験は受かったようだな」
「まぁね◆」
月明かりを頼りにページを捲るクロロは、仕事時の様相とは大きく違っている。私的な用でこの街に滞在しているのだ。
「あいつはどうした」
「ソフィアのことかい?◆」
「そうだ」
「彼女とは念を教えるまでの付き合いだからね……◆」
金色の瞳が暗闇で妖しく煌めいたのを、クロロは視界の中で捉えた。
「ヒソカ、お前が召集を無視したのは何度だっけか」
「……◆」
教えればもう少しは見逃してやらないでもない、と、言外に含んだ言葉。
脅しを使ってまで知りたいのか、と胸中でヒソカは思う。
当然だ。幻影旅団は狙った獲物は逃さない。欲しければ必ず盗み、奪う。
「彼女はイルミのとこ。嫁候補として親に紹介するってさ◆」
「……また、厄介なやつが目をつけて……あいつもあの場に居たからある意味必然かもしれんが……」
額に手を当て頭をがっくり垂れて、クロロが溜め息をつく。
「で、お前も気に入ってるんだろ」
「団長、口調戻ってるよ◇」
「仕事で召集してるわけでもないんだから良いだろ別に。ってかそう言うってことは本気で気に入ってるんだな」
「クロロの察しが早いとこ好きだけど気に入らないなボク◆」
「それは良かった、俺もお前に気に入られたくはないんでな」
言葉の応酬の合間に、ヒソカの携帯が鳴る。取り出して画面を見れば、眩しい光に目を細めた。
着信……メール。イルミからだ。
”ソフィアってドライヤー苦手なんだね”
「ああ、イルミもあれ見ちゃったんだ……◇」
ヒソカの脳裏に思い浮かぶのは、がちがちに身を固くしてきゅっと目を瞑るソフィア。
思い出して頬を緩めるヒソカを横目で見たクロロは、またも溜め息をついた。
イルミはさておき、ヒソカの様子を見れば執着しているのが顕著に見える。
確実にクロロは出遅れた。仕方ないと言えば仕方ないが。
「ゾルディックの本拠地……パドキア、か」
クロロもまた、携帯を取り出して何かを入力する。
送信先は蜘蛛の参謀。内容は、次の仕事場をパドキア共和国にする、というものだった。
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クロ(プロフ) - ユウさん» ユウさん、閲覧ありがとうございます!わあああ面白いの言葉を頂けるとは!めっちゃ嬉しいです! オチはまだアンケート中ですので是非楽しみに待っててください! (2019年6月1日 7時) (レス) id: dcc16283b8 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - ヒソカ、イルミ、フェイタンが好きで、ヒソカオチを捜してたどり着きました!面白いです続きを楽しみにしてます。 (2019年6月1日 2時) (レス) id: 0277b1537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月18日 18時