87、平和な攻防 ページ7
「腕、ありがと。助かったよ、色々制限されるしいちいち手当てされるの面倒なんだよね」
「役に立てたのなら何よりよ」
扉を開いて出てきたイルミが髪から水気をとりながらそう言った。
入れ違いで彼が入浴しようとした際、腕の怪我を見つけた私は念での治癒を申し出たのだ。
「キミって強化系なんだね」
「一応そうね」
「一応?」
「全系統に適正があるのよ」
イルミの目が見開かれる。驚いた猫のようでちょっと可愛い。
「ほんとに、ソフィアは規格外だよね。全系統なんていないよフツー」
「え、そうなの?」
「うん。ていうか、全系統の適正があって自分で回復もできるのに回復用の能力にしたわけ?」
「……自己回復が出来るなんて、教えてない筈なのだけど」
「見てればわかるよ。三次試験での治りが早かった理由もそれでしょ、オーラは動いてなかったから念能力での治癒じゃないし」
流石、洞察力に優れてる。強い者ほど読みが早いし正確だ。
とはいえ、私の治癒能力は隠そうとして隠せるものでもないから仕方ない。
「念能力は他人の治癒用よ。生まれつきの能力は自分限定の治癒で、他人にできる訳じゃないもの」
「成る程ね。……あ、ソフィアも髪乾かす?」
今髪を拭いているのに、何故わざわざ聞いてきたのか。嫌な予感がしてイルミの方を見ると、彼は備え付けのサイドテーブルから私の天敵を取り出した。
即ち、ドライヤー。
「え、遠慮しておくわ」
「駄目、ちゃんと乾かさないと痛むよ。折角長くて手触りの良い髪してるんだからちゃんとして」
「寝る頃には乾くわよ」
「ないね。前髪以外オレとほぼ同じ長さなんだから、間違いなく間に合わないよ」
座っていたソファーから立ち上がり距離を取るように後ずされば、イルミも同じだけ距離を詰めてくる。
じりじりと付かず離れずの攻防は、ソフィアの背後にベッドがあったことですぐに終わりを告げた。
足を引っかけたことでバランスを崩したその隙に、イルミはあっという間に近付くとがしっと腕を掴んでくる。
いつスイッチを入れたのか、ドライヤーの稼動音がして思わず目を閉じると、同時に熱風が顔から頭にかかって身をすくませた。
「大人しくしててね」
嫌だ逃げたい、と心の中で思う。
ソフィアは大のドライヤー嫌いであった。
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こういう話は番外編にするか悩むんですが、番外編の定義がわからないので日常パートも本編ということでこれからも進めます。
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クロ(プロフ) - ユウさん» ユウさん、閲覧ありがとうございます!わあああ面白いの言葉を頂けるとは!めっちゃ嬉しいです! オチはまだアンケート中ですので是非楽しみに待っててください! (2019年6月1日 7時) (レス) id: dcc16283b8 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - ヒソカ、イルミ、フェイタンが好きで、ヒソカオチを捜してたどり着きました!面白いです続きを楽しみにしてます。 (2019年6月1日 2時) (レス) id: 0277b1537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月18日 18時