96、舞というもの ページ16
「ねえ、その手に持っているのは何ていうの?」
「これのこと? 紙扇子。ジャポン製だよ」
「扇子……どういうものなの?」
首を傾げて聞けば、カルトはちょっと驚いたように目を見開いて頬を染めた。けれどすぐに眉を寄せて、難しい顔をする。
「駄目?」
「……ううん、教えてあげてもいい。代わりに今度僕と手合わせしてよ」
「そのくらいでいいなら」
捕食者じみた目でじっと見つめられる。うん、これは確実に私のことを弱いと思っている目だ。
絶状態なのを見るに、カルトはキルアと違って念も習得しているようだけど。力量を見誤るところはまだまだというか、プライドが高いところは流石兄弟と言うべきか。
「基本的にはこっちの扇と変わらないけど、ジャポンでは暑い時期に扇ぐものなんだって。あとは伝統芸能の”舞”にも使う」
「舞? どんなの?」
「……多分、説明するより見せた方が早い」
ソファーに座って見ててと言われ、座る。するとカルトはパチリと扇子を開いて、佇まいを正すとその場で舞を披露してくれた。
くるりくるりと手首を返し、楚々とした動きで袖を翻す。
動作の一つ一つが洗練されていてとても綺麗。思わず見入ってしまう。
「……と、こんな感じ」
舞が終わり、視線を此方に向けるカルトをしばし見つめ返す。訝しげな表情になったのを見て、私はやっと息をついた。
「凄いわ、とても綺麗なのね! 正しく流麗という言葉が相応しいわ。それに、貴方もとても凄いのね。あんなに美しい動きができるなんて」
「……!」
向かいのソファーに座った彼に思ったこと、感じたことを率直に言えばカルトはまたも目を見開いた。
「……お世辞言っても無駄だからね」
「お世辞じゃないわよ」
むぅと唇を尖らせれば、敵意の籠ってない咎めるような視線で睨み返された。
「ね、さっきのって私にもできるかしら? 難しい?」
「……貴方の身体能力にもよる。出来なくはないんじゃない? 教えてあげてもいいけど、手合わせで僕に勝てたらね」
扇子で口元を隠して、目を細める。その目が軽く笑んでいるから、きっと隠している口元も笑っている。
「いいわよ。そういえば、名前で呼んではくれないの?」
「……気付いてた?」
「ずっと貴方って呼ばれてたから気になっただけ。でもそう言うってことは、意図的ね?」
カルトがしまったという表情になって、私はしてやったりと笑みを浮かべる。
「勝てたら、名前も呼んでちょうだいね!」
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クロ(プロフ) - ユウさん» ユウさん、閲覧ありがとうございます!わあああ面白いの言葉を頂けるとは!めっちゃ嬉しいです! オチはまだアンケート中ですので是非楽しみに待っててください! (2019年6月1日 7時) (レス) id: dcc16283b8 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - ヒソカ、イルミ、フェイタンが好きで、ヒソカオチを捜してたどり着きました!面白いです続きを楽しみにしてます。 (2019年6月1日 2時) (レス) id: 0277b1537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月18日 18時