49、勝敗の行方 ページ10
【ソフィア side】
笑う。反撃することなく、ただ獰猛に笑って攻撃を受け続ける。それは声無き笑みだ。表情だけの笑いだ。
ソフィアの瞳の赤みが増して、笑みの凶悪さが際立つ。
常人であればとっくに気絶していてもおかしくないダメージの蓄積を、自己治癒と気力で耐え抜いている。
自己治癒だって、肋骨の骨折や毒と打撲による内臓の損傷を治すにはかなりの時間を要する。
もっとも、獣性を使えば治りは早い。睡眠中なら更に早く治せる。
獣性を使うわけにはいかない。ただ耐え続ける。
ソフィアには、男が何を考えたかを感じ取ることが出来た。攻撃の中に混じる殺気が、自分を殺したいと思っていることを伝えてきた。
ああ、なんて愚か。相手の正体も見極められず、課題と言うことで相手を封じた気になって弄び殺すだなんて。
血を吐き出し、地に伏しても視線を外さずにただ耐え続ける。
男は戸惑い、困惑し、恐怖を覚え始めている。それはそうだ。殴られ続けている相手が笑みを浮かべている上に、イルミが殺気立っているのだから。
囚人の男が錯乱し始めて、次第に攻撃から手加減が消えていってる。
とっくに腕は折れててガードも使えない。これはまずいかしら、と少し思う。
さすがに死んだら、不死がバレてしまう。目のことは誤魔化せても、不死は誤魔化せない。
そろそろ三時間経つ。時間が過ぎたら、あとはイルミに任せよう。彼なら生きていれば運ぶくらいはしてくれるはず。
設定されたタイマーが音を出す。その瞬間、課題をクリアされたはずの男は勝ち誇った笑みを浮かべて拳を振り上げる。私はそれを、暗闇に閉ざされていくなかで見つめていた。
最後に、リッポーの囚人を制止する声と風切り音が同時に聞こえた。
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勿忘草 - 普通にハンゾーが可哀想www (2020年6月20日 15時) (レス) id: a494dee2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月4日 21時