48、耐え続けよ ページ9
「私のあの目、見ても怖がったり遠ざけようとしなかったでしょう。嬉しかったの。だから、貴方を身代わりになんてしたくなかったのよ」
元々誰も身代わりにする気がなかったけれど、それは言わない。私なら肉体的なことは大丈夫だから、誰かの身代わりになったって平気だし。
イルミは、何も言わずコテリと首を傾げた。歩きながら見下ろしながら首を傾げるとか、器用な人だ。
「……それより、次の部屋についたから。下ろして」
「ん。立てる?」
「大丈夫」
部屋の中には、男が一人立っていた。ここの囚人のようで、手足を拘束されている。
イルミが針を構えようとする前に、スピーカーが音を立てる。慌てたようなリッポーの声が聞こえてきた。
『そこでは、身代わりの者にそこにいる囚人の出す課題をこなしてもらう。課題をこなす前に殺せば失格とする』
「イルミ、針しまって」
「はいはい」
出したときと同じように素早くしまいこんだのを確認して、私は男の前に進み出た。
男は嫌な笑みを浮かべて、拘束されている手をボキリと鳴らす。
「おいおい、嬢ちゃんが身代わりか? 腑抜けた男だな、女を身代わりにするとは」
「言っておくけど、私が身代わりになったのは私の意思よ」
「そーかそーか。じゃ、ハズレだったな。俺の出す課題は”俺が加える危害を念を使わず、気絶せずに3時間耐えること”だ。気絶すれば1時間ずつ課題の時間を増やす。
殺しはしないさ、嬢ちゃんの心意気に免じてな」
「それでいいわ」
背後のイルミは納得してないようで、圧のあるオーラが揺らめいてるのが感じ取れる。
「それじゃ、始めようか」
男が言い終わるのと同時に、拘束具が落ちた。
私は耐えきるために、体に力を込めた。
【囚人 side】
俺が殴り始めて、2時間が経過した。
嬢ちゃんは本当によく耐えやがる。纏をも解いて、完全に無防備な状態だ。俺が気絶させるために急所を狙っても、少しだけズラして受けている。
入り口で毒も入ってギリギリだろうに、気絶することはない。
──ああ、気が逸る。
殺しはしない、なんてのは嘘だ。
無防備に、ただ一心に耐え続ける嬢ちゃんを殺す時が待ち遠しい。刑期が延びてでも、殺したい。
時間終了と同時に殺してやる。
そう思って鳩尾を殴り付けたその時、嬢ちゃんは血を吐き出して……獰猛な目付きで、笑った。
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勿忘草 - 普通にハンゾーが可哀想www (2020年6月20日 15時) (レス) id: a494dee2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月4日 21時