【過去編】人間になったばかりの彼女は・1 ページ43
【no side】
捕獲していたはずの怪物が逃げたと聞いて、さっと血の気が引いたのはここ最近のアイザック=ネテロにとってよくあることだった。
今現在は一部の二ツ星以上のハンターしか入れないようになっているこの山は、ハンター協会の所有する土地の一つだ。生物の研究施設が建っており、平時でも一ツ星ハンターと信用のある機関の人員しか立ち入りができないようになっている。
しかし幾ら封鎖してたって、それは外から来る者を拒む措置。中から逃げる者、もっと言えば強大な力を持った怪物なら簡単に抜けて外界へ行ってしまうだろう。
この山だってかなりの山に囲まれてはいるが、それすら越えてしまえば人里だってある。そこまで逃げられたら何があるかわからない。
その上、あの怪物は気に入らなければ簡単に命を奪う。言葉は通じないが奴の能力には相手と意思疏通出来るものがあり、しかもそのせいで此方の考えてることや悪意が伝わりやすい。
殊更に厄介である。
「さて……どこに行きおった」
ネテロはゆるりと起き上がって、円を広げた。
***
「おい」
木の上に座ってボーッと遠くを見る、簡素な白いワンピースの女。此方を見る目には獣の瞳孔が浮かんでいる。返り血に染まった白い生地に、ネテロは眉を寄せた。
”戻る嫌 狭い暗い嫌 縛る嫌外出る外見る”
女は口元を動かさずに、思念で意思を伝える。ネテロにはカタコトの言葉にしか聞こえないが、部下の調べでは此方が知っている表現で最も近い表現が伝わる能力なのだそうだ。単語しか出ないのは、怪物の知性がまだそれくらいしかないからなのだと。その部下は先程息を引き取ったが。
強い拒絶の感情にまたもネテロは眉を寄せ、そして下げた。
「お前さんよお。人間を見たかったらちっとは大人しくせい」
”何故 人血取る 人傷つける 人私殺す 自由無い嫌”
「そうかよ」
また力づくで捕まえるか、とネテロが力を入れる。念は使わない。化け物がさらに化け物になれば手が終えなくなるのだ。
ネテロが構えたのを見て、獣が徐々に目を開きにたりと笑んだ。
音速を超える拳を持つ男と、音速を超えることが可能な肉体を持つ獣が相対した。
【過去編】人間になったばかりの彼女は・2→←作者より・続編のお知らせ
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勿忘草 - 普通にハンゾーが可哀想www (2020年6月20日 15時) (レス) id: a494dee2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月4日 21時