51、思考の迷路 ページ12
もう一度見下ろして、オレは目を見開いた。
ソフィアの怪我が、さっきよりも治ってる。念能力じゃない。
これも、生まれつき?だとしたら、ソフィアを嫁に迎えればウチはますます強くなれるかも。
そうしたら、オレとソフィアがキルの役に立って。
思考が止まる。思いもしなかった考えに、足も止まる。
ソフィアが強いなら、キルに嫁がせた方がいい。その方が、確実に家のためになる。
だってあいつは、次期当主になるんだから。当主の子が強い方が良い、はずだ。
なのに。
なのに、なんでオレは、オレの嫁にしたがったんだろう。
なんでキルの嫁にすることが思い付かなかったんだろう。
オレが正体を明かしたのは、そうしてまでソフィアを手に入れる価値があると思ったから。
実際そうだったし、傷の治りが早かったり飛来する罠を防いだりとまだソフィアが隠してることは多い。
でも、価値が高いならキルの嫁にした方がいい。
嫌だ。でも何故いやだと思うのかわからない。
『嬉しかったの。だから、貴方を身代わりにしたくなかったのよ』
慣れてない毒は苦しいだろうに、自分が吐き出す血に濡れながらも微笑むソフィアを思い出す。
オレは毒も拷問も慣れてるから、身代わりになったって平気だったのに。
ぐるぐる、ぐるぐると訳のわからない何かに思考を支配される。苛立ちとかじゃない。根本的に、闇人形にはいらないはずのもの。
出口の見えない迷路に入ったような気分。
そんなことを考えている内に、塔の攻略が終わった。どうやらあの試験官はちゃんと近道を開けてくれていたようだ。
出口が開く前に顔に針を刺して、傷の大半が治ってしまったソフィアを抱え直す。
「ヒソカ。ソフィアが起きるよ」
出口を抜けた瞬間に、強い殺気が向けられる。ソフィアを抱いていなければ、すぐにでも身構えたいくらいに強い。
アナウンスがオレとソフィアのタイムを告げ終わり、無表情で此方を睨み続けていたヒソカが口を開いた。
「……彼女に何をした◆」
「オレは何もしてない。相手はちゃんとオレが殺ったから安心してよ」
「そ◆」
「信じてないよね。まあいいや、ソフィア預けるよ。この顔だと動きづらいし」
歩み寄るヒソカに、ソフィアを渡す。渡したくなかったけれど、仕方ない。
するとヒソカが安堵したような気の抜けた笑みを浮かべた。
なんだ、予想以上に執着してるじゃん。
ああ、やっと答えを思い付いた。オレも執着してたのか。
……でもなんで?
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勿忘草 - 普通にハンゾーが可哀想www (2020年6月20日 15時) (レス) id: a494dee2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年5月4日 21時