6話 ページ6
− 放課後−
フゥ。やっと日誌書き終わったー。
さてと。帰るかー。
私は日誌を先生に届けて玄関へと向かった。
通りすがりにふと隣の教室から聞こえてきた声に、私の足はパタリと止まった。
「ごめん…。まだ人を好きになれないんだ…」
幸村君の…声だ…。
「幸村君…まだ椎名さんのこと…引きずってるの…？」
「………」
「もう椎名さんは戻って来ないんだよ…。どんなに待ったって…。新しい恋愛した方が忘れられるんじゃないの…？」
「ごめん…今はまだ…考えられない…」
………
盗み聞きみたいでダメだってわかってるのに、足が動かない…。
バンっとドアを開ける音がして、女の子が教室から飛び出してきた。
急いで柱の陰に隠れると、幸村君がゆっくりと教室から出てきた。
「A…？」
私はビクッとして、恐る恐る柱の陰から顔を出した。
「ごめん…。盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど…。歩いてたら声が聞こえてきてしまって…」
幸村君は苦笑いしながら言った。
「恥ずかしいところ見せちゃったね…。自分でもわかってるんだ…。このままじゃいけないってことくらい…」
「…いいんじゃないのかな…」
「……え？」
「いいんじゃないのかな…。時間がかかったって。それだけ香月のことを大切に思ってたってことでしょ。」
あれ…胸がチクチクする…。
「香月を忘れられないことを、恥ずかしく思うことはないと思う。思い出に変えるための時間の長さに、早ければいいなんて法則、ないよ。幸村君のペースで思い出に変えていけばいいんじゃないのかな…」
「A…」
なんで…自分で言ってて胸が痛むんだろう…。
「Aには励まされてばかりだね」
幸村君は微笑んだ。
ズキン…
なんだろう…また別な痛みだ…。
胸の中いっぱいにモヤモヤした気持ちが広がった。
「じゃ、私、先生に伝え忘れたことがあるから職員室に寄って帰るね。
明日のお墓参りだけど、2時に綾瀬の駅で待ち合わせでいいかな。仏花は私が用意してくね」
「うん」
「じゃ、また明日っ！」
私はなんだか苦い気持ちになって走り出した。
「A！」
振り向くと、幸村君は『ありがとう』と優しい優しい笑顔を見せた。
私は『うん』と短く答えて、振り切るようにまた駆け出した。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 135人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
朔 - 上手い！！上手すぎます！！！どっちも好きすぎるのですが私の答えは決まってしまいました！！！ (2021年6月15日 1時) (
レス) id: 2e63a126ca (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 亜弥*さん» ありがとうございます！！(*^_^*) (2015年8月23日 21時) (レス) id: 42a026aa1a (このIDを非表示/違反報告)
亜弥* - どっちにしようかまよう! あと、これからも頑張って下さい。読むのが楽しみです (2015年8月23日 1時) (レス) id: de645498d4 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 菊姫さん» 菊姫さん、ありがとうございます！泣いてくれたなんて恐縮です>_< 励みになります！ (2015年2月3日 8時) (レス) id: 1b761003cc (このIDを非表示/違反報告)
菊姫 - 前のお話を読んで泣いちゃいました！感動的ですね…これから3人の関係がどうなるのか気になります！ 更新頑張って下さいっっ！！ (2015年1月31日 22時) (レス) id: 22b58266a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彩 | 作成日時：2014年10月20日 20時
