33話 ページ33
ー 幸村side ー
部屋で一人、今日起きた説明のつかない出来事をぼんやりと思い返す。
ぎゅっと胸に顔を埋めた後に見上げたAの潤んだ瞳で気がついた。
Aの自分に対する特別な感情に…。
そして自分の気持ちにも。
最初は驚いた。
そういう目でAを見たことはなかったし、自分がそういう目で見られているなんて、一度も考えたことはなかった。
一緒にカフェに行ったあの日までは…。
重なった手に動揺したAに、もしかして、と意識し始めて以来、Aのことが頭から離れなくなった。
そして今日、Aをこの腕の中に抱きとめた時、心臓はすごい速さで脈を打った。
小さく震えるAを、自分の想いを押し殺して俺の気持ちを真っ先に優先して励ましたAを、とても愛しいと思った。
この腕の中にいるAに強く惹かれてる…。
それなのに…
香月からもらったブレスレットがふと目に入った瞬間、自分の中の何かがブレーキをかけた。
そして思わずAの身体から離れた。
香月が残していった数々の記憶が頭の中を駆け巡る。
あの頃は、たとえこの先どれだけ素晴らしい人に出会おうとも、この恋以上には、他の誰かを好きになれる気がしなかった。
それくらい、あの季節は、香月への想いは、強い光を放って心の中に存在していた。
その記憶が進み始めた気持ちにブレーキをかける。
香月の記憶に後ろ髪惹かれる自分と、Aに惹かれている自分。
自分の感情のはずなのに理解できない。
まるで自分の中に自分ではない別な人間がいるようだった。
説明をつけられない自分に撹乱して、額をおおった。
俺は一体、どうしたいんだろう…。
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朔 - 上手い!!上手すぎます!!!どっちも好きすぎるのですが私の答えは決まってしまいました!!! (2021年6月15日 1時) (レス) id: 2e63a126ca (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 亜弥*さん» ありがとうございます!!(*^_^*) (2015年8月23日 21時) (レス) id: 42a026aa1a (このIDを非表示/違反報告)
亜弥* - どっちにしようかまよう! あと、これからも頑張って下さい。読むのが楽しみです (2015年8月23日 1時) (レス) id: de645498d4 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 菊姫さん» 菊姫さん、ありがとうございます!泣いてくれたなんて恐縮です>_< 励みになります! (2015年2月3日 8時) (レス) id: 1b761003cc (このIDを非表示/違反報告)
菊姫 - 前のお話を読んで泣いちゃいました!感動的ですね…これから3人の関係がどうなるのか気になります! 更新頑張って下さいっっ!! (2015年1月31日 22時) (レス) id: 22b58266a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩 | 作成日時:2014年10月20日 20時