32話 ページ32
-
でもそれは、儚い夢のように短かった。
ふと横を見た私の目に、幸村君の腕に光るブレスレットが映る。
香月からもらったお揃いのあのブレスレットが、香月のと幸村君のふたつ分。
私はそれを見た瞬間、現実に引き戻された。
イケナイ…。
理性のカケラが私に訴えかける。
そして私が幸村君の胸から身体を離したのとほぼ同時に、幸村君の腕もまた、パッと私の身体から離れた。
幸村君はハッとしたように一瞬固まって、手の甲をごつりと額にあてた。
「ごめん…」
静かにそう言った幸村君は、うつむいていて、どんな表情をしているのかは見えなかった。
でも、それだけで十分だった。
わかってしまった。私たちの間には越えられない大きな壁がある…。
胸をぎゅうっとしぼられるみたいに切なくなった。
私にとっても、幸村君にとっても、香月の存在は大きすぎる。
思い出なんて思えないくらい、しっかりとした質量を持って私たちの心の中に住んでいる。
私は、いくら想っても届かなくて、想ってはいけないのに止められなくて、どこにも行けない苦しさと寂しさに、途方に暮れた…。
いくら幸村君を想っても、自分には『その先』なんて…ない。
わかっているのに『その先』を望んでしまったり、その度に香月の顔が浮かんで胸が苦しくなる。
私は目を閉じて、大きく深呼吸をした。
そして私はなけなしの強がりで笑顔を作り、『見つけてくれてありがとう』と言った。
-
135人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
朔 - 上手い!!上手すぎます!!!どっちも好きすぎるのですが私の答えは決まってしまいました!!! (2021年6月15日 1時) (レス) id: 2e63a126ca (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 亜弥*さん» ありがとうございます!!(*^_^*) (2015年8月23日 21時) (レス) id: 42a026aa1a (このIDを非表示/違反報告)
亜弥* - どっちにしようかまよう! あと、これからも頑張って下さい。読むのが楽しみです (2015年8月23日 1時) (レス) id: de645498d4 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 菊姫さん» 菊姫さん、ありがとうございます!泣いてくれたなんて恐縮です>_< 励みになります! (2015年2月3日 8時) (レス) id: 1b761003cc (このIDを非表示/違反報告)
菊姫 - 前のお話を読んで泣いちゃいました!感動的ですね…これから3人の関係がどうなるのか気になります! 更新頑張って下さいっっ!! (2015年1月31日 22時) (レス) id: 22b58266a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:彩 | 作成日時:2014年10月20日 20時