26話 ページ26
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私たちはお目当てのカフェに入り、私はベーコンの、幸村君はサーモンのエッグベネディクトを注文した。
ポーチドエッグのトロリとした黄身とオーロラソース、香ばしいベーコンの味が口いっぱいに広がって、あまりに美味しくって身がよじれた。
「んーっ!美味しい〜っ!!!ここのエッグベネディクト、美味しいって聞いてたからすっごく来たかったんだ!嬉しいっ!」
「そんなに喜んでくれて嬉しいよ。サーモンのほうも食べるかい?」
そう言ってキレイに切り分けたサーモンのベネディクトを私のお皿に乗っけてくれた。
わ…なんだか恋人同士みたいだな…////
「ベ、ベーコンのもどうぞ!」
なんだか嬉しくってくすぐったくて、エッグベネディクトを取り分ける手がほんの少し震えた。
「んーっこっちも美味しいっ!」
「Aは本当に美味しそうに食べるよね。見てるこっちも幸せな気分になるよ」
幸村君は目を細めた。
トクン…
あぁ、まただ。私の胸は跳ねてばっかり。
好きがどんどん募っていく。
この瞬間がいつまでも続けばいいのにな…。
そうは思っても楽しい時間は無情にもあっという間に過ぎる。
そろそろ出ようかと同時に立ち上がった時、伝票に伸ばした二人の手が重なった。
あっ…//////
パッと手を引っ込めてうつむいた。
胸がドキドキして、顔が熱くなっていくのがわかる。
私、今、絶対真っ赤だ…。
とても顔をあげれなかった。
幸村君は一瞬止まったけど、それから普通に
「今日はこの前のお礼だから奢らせてね」
と柔らかい声で言って伝票を持ってレジに向かった。
さっき重なった手が火照る。
私たちは友達で、これはデートじゃない、その当たり前の事実をふと思い出して、胸がしめつけられるように切なくなった。
本当の恋人同士だったらどんなに幸せだろう。
いつの間にかそう考えてる自分がいる。
ヒナの言葉が頭をよぎった。
『そのうち想いは募って、好きな人に振り向いてもらいたくなる』
ほんとだ…。
ただ見守るだけでいいなんて、嘘だ。
本当にそうなら、こんな欲張りなこと、考えることすらしない…。
「A?」
幸村君は静止したままの私を見て心配そうに優しく声をかけた。
「あっ、今行く!」
私は精一杯の笑顔を作って駆け寄った。
切ない気持ちを胸の奥にしまいこんで。
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朔 - 上手い!!上手すぎます!!!どっちも好きすぎるのですが私の答えは決まってしまいました!!! (2021年6月15日 1時) (レス) id: 2e63a126ca (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 亜弥*さん» ありがとうございます!!(*^_^*) (2015年8月23日 21時) (レス) id: 42a026aa1a (このIDを非表示/違反報告)
亜弥* - どっちにしようかまよう! あと、これからも頑張って下さい。読むのが楽しみです (2015年8月23日 1時) (レス) id: de645498d4 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 菊姫さん» 菊姫さん、ありがとうございます!泣いてくれたなんて恐縮です>_< 励みになります! (2015年2月3日 8時) (レス) id: 1b761003cc (このIDを非表示/違反報告)
菊姫 - 前のお話を読んで泣いちゃいました!感動的ですね…これから3人の関係がどうなるのか気になります! 更新頑張って下さいっっ!! (2015年1月31日 22時) (レス) id: 22b58266a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩 | 作成日時:2014年10月20日 20時