23話 ページ23
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やっと散らばったゴミが片付いたところで、仁王くんにお礼をしようと思った時、あることに気づいて顔から血の気が失せていった。
あれ…ブレスレットがない…。
あっ…!!
ほんの数歩先にキラリと光るものが見える。
それは確かに私のブレスレットだった。
ホッとして拾おうと駆け寄ったその時、何かの影がしなやかにそこに飛び込んだ。
『あっ!!』と思った時にはもう遅くて、猫がそのブレスレットをくわえて、まるで『もう私のものよ』とでも言うかのように私を流し見て走り去った。
えーーーっ????
「アタシのブレスレットーーー!」
私は猫を追って走り始めた。
途中、仁王君と置きっ放しのゴミ箱のことを思い出して振り向きざまに叫んだ。
「仁王君ごめん!!私、猫追いかけてくる!!ゴミ箱は後で取りにくるからそこに置いておいて!手伝ってくれてありがとーーー!!!」
それだけ言うと全速力で走った。
草むらの中をかき分けて、水溜りも気にせず一心不乱に。
そしてやっとの事で猫を視界に捉えた。
後ろからそっと猫に近づく。
そっと…そっと…。
っ…!!!!
その時、誰かが後ろから私の口を抑えた。
?!?!?!
振り返ると、仁王君が唇に人差し指を当てて『シーッ』っとジェスチャーして、ポケットからキラキラしたスーパーボールを取り出し猫のほうに投げた。
すると猫はくわえていたブレスレットをポトリと落としてスーパーボールのほうに走って行った。
私は駆け寄ってブレスレットを拾うとぎゅっと抱きしめた。
「良かったーっ!仁王君、ありがとう!!!」
仁王君のほうに振り返って笑顔でそう言うと、すっかり仁王君の部活の時間が過ぎていることに気がついた。
「ごめんっ!仁王君、部活遅刻になっちゃって…。走らされる?」
テニス部は遅刻に厳しいっていうし…。
私のせいで申し訳ないな…。
「気になさんな。大事なもんだったんじゃろ?良かったな。見つかって」
そう言って優しい瞳で笑った。
その笑顔に、ふと緊張の糸がほぐれて、涙がぽろぽろ溢れてきた。
「ホント…良かったぁ…」
そのブレスレットは、香月が私の生年月日に合わせて天然石を選んで作ってくれたもので、香月と幸村君と3人お揃いの、香月の形見と言っていいものだった。
私は仁王君にもう一度『ありがとう』と言って涙を拭い、笑顔を見せた。
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朔 - 上手い!!上手すぎます!!!どっちも好きすぎるのですが私の答えは決まってしまいました!!! (2021年6月15日 1時) (レス) id: 2e63a126ca (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 亜弥*さん» ありがとうございます!!(*^_^*) (2015年8月23日 21時) (レス) id: 42a026aa1a (このIDを非表示/違反報告)
亜弥* - どっちにしようかまよう! あと、これからも頑張って下さい。読むのが楽しみです (2015年8月23日 1時) (レス) id: de645498d4 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 菊姫さん» 菊姫さん、ありがとうございます!泣いてくれたなんて恐縮です>_< 励みになります! (2015年2月3日 8時) (レス) id: 1b761003cc (このIDを非表示/違反報告)
菊姫 - 前のお話を読んで泣いちゃいました!感動的ですね…これから3人の関係がどうなるのか気になります! 更新頑張って下さいっっ!! (2015年1月31日 22時) (レス) id: 22b58266a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩 | 作成日時:2014年10月20日 20時