【刀剣乱舞】審神者が真名を明かすまで弐 (ページ16)

今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:909 hit

第63話　そして今へページ16

ひい、と月詠は毛根を気にして頭を触るが、やる気などない
　狼狽える兄の姿を見て、によによと審神者は笑う
　普段反撃しようとしても返り討ちに逢うのだ
　ならこれくらいしたっていいだろう
　それでも、ここに来た役割を果たさねばならない

「大丈夫です」

　不意に
　審神者はその幼い見た目に反するほどの大人びた顔をする
　中身は大人の１歩手前なので、普段の顔になるだけなのだが

「詳しくは私たちの物語が変わるので言えませんが、大丈夫です。兄さんたちなら上手くやっていきますよ」

　鶏が先か、卵が先か
　この時の自分は意識を失っていたので、審神者が告げる言葉が正しいかは分からない
　それでもいいと、審神者は胸に手を置いた
　それからまた山姥切の方を向く

「山姥切国広。貴方はどこまでも約束を守る人。それが心配になる時もあるけれど」

　山姥切の手を取り、無邪気な顔をして笑う

「貴方と出会えて、ここに来れてよかっ」
「何してるのかな？」

　言葉が途切れた
　本体に、話しかけられたのだ
　これはまずい、と審神者が口を開く前に、山姥切は恐る恐る「主？」と声をかける

「あ、ごめ、ちょっと待ってね！！」

　見るからに慌てている青葉
　未来の自分の頬をぺしぺしと何かで叩かれている
　これは非情に不味い

「ちょっ！！ぎっ！！昨日言ったじゃん！！言ったじゃん！！待ってほんと待ってあと少ししたら戻るから！！」
「言われてないけど？ほら早く報告書やりに戻るよ」

　しれっと現在の長義に嘘を吐く
　術が解けそうになっている

「あ、主？」
「わー！！ごめんまんば！！ここに来れてよかったって思うんだ！だからまんばも、自由に──ってちょぎほんとあと少し待っ……」
「これの締切今日なんだけど」
「締め切り今日！？マジで！？」

　慌ただしく、審神者はそう言った
　月詠はこの言葉で審神者が「本丸を運営している」事が分かった
　それからその先の彼らが苦労しているということも
　──いや
　きっとここにいる何人かも分かったのだろう
　だから彼らは吹き出した

「待って混線してるんだけど！！そろそろ行かないとヤバいから、表情直しといてね！！幼い私が混乱するから！！」

　ああ、と皆が頷くのを確認してから、審神者は現在へと帰還する
　めちゃくちゃ笑われた、と嘆きながらも長義から書類を受け取った

「で？何してたの？」
「んー……」

　少し考えた後に彼女は、

「今を、繋ぎに行ってた」

　と答えた