第61話 やるべきこと ページ14
──ふと
そういえば最近はなんだかんだでやっていない事があった
なので、することにした
突然ではあるので、紙にある程度の書き置きを残し、審神者は自身の部屋で印を組み、瞑想をする
それから魂だけを時間遡行させる
あの日、あの時
きっと彼はまだ皆に心を許していない
また助けようとして暴れてる
彼にとって自分しかいなかったように、自分にとっても彼しかいなかった
だから、世界を広げに行く
だから、時を遡る
彼らが繋いだ「今」を、彼女がまた繋げに行くのだ
目を、開けた
そこにはかつての仲間たちと倒れた自身の山姥切国広
意識を失う術をかけられただけだが、彼もまたどうしようもないほどに暴れてしまっていたのだ
何も見えず、何も届かず
ただひたすらに守ろうとしただけだった
主である幼い審神者の声も、彼には届いてなどいなかった
歌仙が叫ぶ
「──こんないきなり！」
「あーもー」
だから、空気を変えた
「相変わらず兄さんは手荒なんですから」
その部屋にいた刀たちの視線が刺さる
だけど、気にしてなどいられなかった
──足が痛い
そう言えばこの頃はずっと裸足で歩き続けていた
それでも、彼に──山姥切国広に伝えなければいけないことがあった
「ほら、まんば。とっとと起きてよ」
この程度の術であるなら、その言葉だけで充分であった
天才とはいえ、まだ成長途中の兄の術だ
定期的に術をしこたま仕込まれている現在の審神者であるなら、破るのは簡単なのだ
小さく呻き、起きた山姥切は、「ある、じ」と呟くと何に気づいたのか掴みかかろうとした
(本当、よく見てるよね)
嬉しかった
だがそれをしていても始まらない
審神者はぴしゃりとその名を呼ぶ
「山姥切国広」
手を払い除け、友として、家族としてではなく、１人の主として語りかける
「私はね、貴方の呪いを解きに来たのよ」
彼の誓いは既に自身に課せた呪いのようなもの
守らなければいる価値などないと、自分を責めてしまう類いのものである
それを審神者は解きに来た
そうすることによって、正史にするために
これは後々兄から聞いた話ではあった
山姥切を構成する物の１つ
「まだこの時の私は上手く貴方に言えないけど」
山姥切の頬に、そっと手を置いて彼の心を宥めさせる
(主だ。間違いなく、＊＊だ)
気付いてくれた、と審神者は笑う
だからこそ、彼女も言えるのだ
「ありがとう、まんば」
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作者名：とあるさにわ | 作成日時：2022年5月31日 14時
