#９８「幼稚な声」 ページ48
暗闇の中感情を削ぎ落とし、ぼんやりとした表情で立っている柊が虚空を見つめていた。
敵連合の頭は私に何の個性を使用したのだろうか。ここはどこなのか。彼女の中で疑問が浮かんでは消えていく。体を動かす事は疎か、思考する事すらも怠いらしい。
「どうしたの？A、楽しそうだね」
「うん、お母さん、あのね」
「なぁに？」
ふと近くに小さな子供と女性が現れる。幻であろうソレに彼女は酷く動揺した。ソレは思い出したくもないあの日の記憶。幼い頃の自分と今はいない母親だったからだ。
ソファに座っていた小さな彼女は布を掛けて隠していたプレゼントを母親に差し出すとにっこりと無垢に笑った。
「これね、お父さんと一緒に買いに行ったの。今日はお母さんの誕生日なんでしょ？いつもありがとうね、大好きだよお母さん」
「っ、私も大好きよ、A」
膝をつき小さな彼女からプレゼントを受け取った母親は心底嬉しそうに、幸せそうに微笑み愛し子を抱きしめる。
小さな彼女も母親の背に手を伸ばす。
―――駄目だ。
彼女が唇を震わせながら零した。それと同時に駆け出し、必死に昔の自分と母親に手を伸ばす。
小さな彼女には何かが聞こえたのか、彼女の方向を向くが、彼女には気が付かずに首を傾げた。それから母親に意識を向け、空中で止まっていた手を再び大好きな母親の背に伸ばす。
昔の自分の手が母親の背に触れるその
―――止めて。触れないで。待って。駄目なんだよ。その手で触れたら。ねえ、待ってよ。
おかあさんをころさないで。
酷く情けない貪欲に何かを渇望する、彼女の声とは思えないくらい幼稚な声が彼女から発せられた。
小さな彼女が母親の背についに触れる。
瞬間、母親は消えた。小さな彼女は突然消えた母親にただ首を傾げて、きょろきょろと辺りを見渡す。
ああ、なんて可哀想な子なんだろう。他人事にそう思いながらも彼女はぼろぼろと涙を流していた。
可哀想な自分。個性が発動していた事に気が付かずに母を殺してしまうなんて、愚か極まりない。
「お姉さん、私のお母さんを知らない？あれ、どうして泣いてるの？どこか痛いの？」
いつの間にか目の前に立っていた小さな自分に、彼女は涙でぐしゃぐしゃになった顔で力なく微笑んだ。
「
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- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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柚子(プロフ) - いやあの……ほんと……ルビの振り方天才すぎます。今まで読んできた小説の中で1番迫真な（？？）続編のお知らせで正直めちゃくちゃ笑いました。最高です。応援してます！！ 初コメ失礼しました*ˊᵕˋ* (2021年9月20日 0時) (
レス) id: 15ce971549 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 最後めっちゃじわじわきてコメント欄みたらもう声出して笑った笑笑笑笑 作者様好き (2021年8月25日 20時) (レス) id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
ニア(プロフ) - めっちゃシリアスで柊ちゃんは、世界はどうなるの!?……と思ってたらまさかの 続 編 あ り ま す で吹き出しましたwww (2020年4月28日 15時) (レス) id: 95c832e6cf (このIDを非表示/違反報告)
岡本さんのキャラだったらなんでも好きな人(プロフ) - めっちゃシリアス！？って思ったら続編！！頑張ってください！ (2018年3月9日 0時) (レス) id: a65a5fd2aa (このIDを非表示/違反報告)
にゃーのまる(プロフ) - マジか！？ってなりました。かなり呆気ない打ち切り漫画の様な終わり方だったので続編があって嬉しいです（*'‐'*)♪ (2018年3月7日 22時) (レス) id: 4d95e3749f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊歩
| 作成日時：2016年12月3日 18時
