#７０「雨」 ページ20
「...」
「Aちゃん、おはよう」
「...蛙吹さん、おはよう」
ぼうっと外履きから上履きに履き替えていると隣に蛙吹さんが来た。反応が遅かった私に彼女は首を傾げると「体調不良かしら、大丈夫？」と素晴らしい気遣いを発揮する。
「大丈夫だよ。満員電車にもみくちゃにされただけ...蛙吹さんは雨好きそうだね」
「梅雨ちゃんと呼んで。雨は好きよ」
「だろうねぇ」
想像できた蛙吹さん...梅雨さんの回答に頷き雑談をしながら教室に入る。ワイワイと体育祭の影響の話で盛り上がっているクラスメイトを頬杖をつきながら一瞥し、雨に濡れる窓越しにどんよりと暗い灰色の空を見上げた。
一昨日、不思議な夢を見た。内容こそ思い出せないがとても懐かしく、夢の中で私が泣いたのは確かだろう。いや、起きたら実際に泣いていたのだから、確実に。まぁ、どうでもいいか。大事なのはここからだ。
あの夢を見た直後から、頭がぼんやりとして思考が白い靄に囚われている。
だからだろうか？時折体の輪郭が景色に溶け込むような感覚になり、このまま消えてしまうのだろうかと不安になるのは。果たしてそれが不安と呼べる感情なのか私自身よく分かっていないが。
「柊、おはよう」
「っ、...轟くん、おはよう。いい天気だね」
「雨だぞ」
「その、お前の目は豆腐でも詰まってるのか、って目は止めてくれよ。ただのいつもの挨拶じゃないか」
「木綿豆腐？」
「絹豆腐の方が好きかな」
ふわふわと緩い脳味噌を使ってなさそうな会話に、ああよかった、と密かに安堵の意味を吐いた。
どっぷり浸かっていた思考の海から現実に引き上げられ、思わず肩を揺らした事に轟くんは気が付いたのだろう。どこか探るような視線をむず痒く感じながら、いつも通りの挨拶からどうでもいいような話になり、いつも通りだと薄く、僅かに、控えめに笑う。
雨が窓を叩く音がやけに耳に響いた。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1068人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柚子(プロフ) - いやあの……ほんと……ルビの振り方天才すぎます。今まで読んできた小説の中で1番迫真な（？？）続編のお知らせで正直めちゃくちゃ笑いました。最高です。応援してます！！ 初コメ失礼しました*ˊᵕˋ* (2021年9月20日 0時) (
レス) id: 15ce971549 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 最後めっちゃじわじわきてコメント欄みたらもう声出して笑った笑笑笑笑 作者様好き (2021年8月25日 20時) (レス) id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
ニア(プロフ) - めっちゃシリアスで柊ちゃんは、世界はどうなるの!?……と思ってたらまさかの 続 編 あ り ま す で吹き出しましたwww (2020年4月28日 15時) (レス) id: 95c832e6cf (このIDを非表示/違反報告)
岡本さんのキャラだったらなんでも好きな人(プロフ) - めっちゃシリアス！？って思ったら続編！！頑張ってください！ (2018年3月9日 0時) (レス) id: a65a5fd2aa (このIDを非表示/違反報告)
にゃーのまる(プロフ) - マジか！？ってなりました。かなり呆気ない打ち切り漫画の様な終わり方だったので続編があって嬉しいです（*'‐'*)♪ (2018年3月7日 22時) (レス) id: 4d95e3749f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：遊歩
| 作成日時：2016年12月3日 18時
