ゼラニウムの花言葉 (ページ5)

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第5話ページ5

最後に浴槽。

これがとても広い。

全寮制、しかも男子校だ。

浴槽も複数人の生徒が

一度に入れるように設計されている。

一日中、勉強、部活を頑張る彼らが

体を休める場所だ。

手を抜くなんてことはしない。

床同様、隅々まで磨きあげる。

そして脱水所の落ちた髪を掃除機で吸い上げ、

鏡の指紋を拭きあげる。

ロッカーの中を確認し、

忘れ物がないかチェックする。

最後に一回りして確認し、大浴場をあとにする。

次にトイレだ。

これは意外かもしれないが

綺麗に使われているため比較的掃除が楽だ。

指導している歴代の部長さんには感謝しかない。

風呂と同じ容量で手洗い場と鏡を磨きあげると、

専用のブラシを使ってトイレを磨きあげる。

床もモップを二、三度掛ければ元の光沢が戻る。

最後にトイレットペーパーと石鹸を

補充したらトイレの掃除が終わる。

手を洗った後に

ポケットから携帯を取り出すと

時計はお昼すぎを示していた。

掃除道具を廊下の端にまとめ、

生徒が泊まる寮の少し離れた専用の部屋に向かう。

希望を出せば支給される個室で清掃服を脱ぎ、

首から学校関係者と書かれたプレートを下げると

食堂に向かって半ば駆け足で向かった。

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昼食の時間ともなると食堂は生徒で溢れかえる。

宗介と凛は早めに料理を選び席につき、

食事を始めると、椅子をひとつ開けた

隣の席の男たちが

来た来た。と声を潜めて会話していた。

それに気付いた凛がああ。と気付いたように呟く。

「なにか来たのか？」

「ん。ああ、(人1)だよ。

大体この時間帯に昼食なんだ。

学校関係者もよく利用するからな。

ほら、あそこ」

凛が食堂の隅を指さすとその先には

確かに(人1)がトレーを持ち

トコトコと歩く後ろ姿が見える。

「今日もやっぱりあれか？」

「ああ、間違いねえ。今日はカツカレーだ」

「ほんっとにカツ好きだよなあ」

「昨日はカツ丼だったぞ」

隣の男子の声につられて

目を凝らしてみるとトレーの中には

確かにカツカレーが乗っている。

宗介が己のトレーに目線を落とすと

食べかけのトンカツ定食が目に入る。

(この学校カツだけレパートリー多くねえか...？)

そんなことを思いながら箸を進めようとすると

凛が未だに(人1)の方を見ていることに気づく。

凛の食事をする手を止め、

まるで愛玩動物を見るような視線に

宗介は溜息をこぼした。