第19話 ページ19
「山崎くん。ありがとう」
頬に添えられた右手が酷く熱かったのは
熱のせいだろう。
きっとあの後
しばらく外で座り込んでいたんだろう。
掃除のおばさんが言っていたように
昨日は少し冷えていた。
宗介を待っていた時間を考えると
長時間外気に晒されていたことになる。
そっと腫れた目元をなぞる。
(泣かせたのか...)
宗介が目を細めると頬に触れる手が離れ、
何も言わず、頭を撫でる。
小さい子供を慰めるような撫で方に
恥ずかしさがこみ上げるが
病人のされるがままにしておく。
「...この前は悪かった」
宗介がそう口にすると
頭を撫でていた手が離れる。
「ううん。私が無神経だったから...
ごめんなさい」
「いや。俺が_____」
「ねえ。山崎くん」
宗介の言葉を遮る(人1)。
「私、やっぱり辛い時は言ってほしい。
大した力になれないかもしれない。
けど、やっぱり
そばに居て支えれたら...いいなって。
知らなくって...何も出来なかったことを
後悔したくないから」
「......そうか」
「だから山崎くんも...
今じゃなくていいから...いつか...
凛くんにも...
言ってもいいんじゃないかな...」
「そうだな。いつか...話す」
「うん。そのいつかが来るまでは...
私でよければ聞くよ...
上手く支えれないかもだけど...
山崎くんの、みんなの力になれたらって...」
あんなにも怯えた目をしていたのに_____
今だって身体がしんどい時なのに_____
宗介は口を固く結んでから、
一呼吸置いて口を開く。
「ありがとな。
でもな、いつもの挨拶とか迎えの言葉、
それだけで十分だ。
ちゃんとみんなの支えになってる」
すると青い瞳が見開かれ、すぐに細められる。
「どうした？」
「ううん。
寮の中に女子がいると色々気を使わせちゃって...
嫌な思いさせて...
迷惑...かなって思って...た...から...」
「迷惑と思ってたら
あんな風にお前に話しかけたりしねえよ」
「そっか...」
青い瞳からポロポロと涙が溢れる。
「おいおい。また泣き腫らすぞ」
「うん。ありがとう...」
止まる様子のない涙に
宗介は困ったように笑った。
_____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____
ガチャ_____
「お、宗介。おかえり」
「おう。
...凛」
「ん？」
「ありがとな」
宗介の言葉に凛はくしゃりと笑う。
「どーいたしまして」
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作者名：学 | 作成日時：2018年9月4日 22時
