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第17話 ページ17

賑わう食堂の中、

宗介は立ちすくんでいた。

目線の先にはトンカツ定食完売の張り紙。



「あー。(人1)、昨日これ食べたんだな。

すげぇ分かりやすい」



笑う凛の隣で宗介はため息をつく。

徐ろに食券のボタンを押した瞬間、あっ。

と声が出た。

その声に凛は手元をのぞき込む。



「どうした宗介...ってそれオムライスじゃねえか。

珍しいな」



宗介は二度目のため息をつく。



(間違えた...)



隣のハンバーグ定食にしようとしていたら

誤ってボタンを押したようだ。



(何やってんだ俺...)



どうにも朝見た(人1)の顔が忘れられない。

下手な作り笑いは酷いものだった。

鈍い凛には分からなかったようだが

映画を見た程度であんな目の腫れ方はしない。

理由は...心当たりが無いわけじゃない。



「宗介?大丈夫か?」


「あ、ああ。悪い」



心配そうにのぞき込む凛に笑顔を向ける。



「ほら、後ろ詰まるから早く行くぞ」



凛は何かを察したようだが何も言わず、

先に進むように促す。

日頃は鈍いくせに宗介の事だと人一倍鋭い凛に

宗介はこの時ばかりは厄介と感じた。


_____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____



「ん?あれ。おばさん。(人1)は?」



寮に戻ると別の清掃員が掃除をしていた。



「ん?ああ。

九条さんなら今日は体調不良で早退したよ。

顔真っ赤にして...きっと風邪ね。

かなり熱あったみたいだから

明日も念の為休むそうよ」


「そっか...朝から少し様子へんだったからな」


「あらそうなの?昨日の夜は冷えたからね。

あんた達も気をつけな」


「分かりました。ありがとうございます。

...宗介?」



凛は歩き出すが

宗介が着いてくる気配がないのに気づき、

振り返る。



「..........」


「宗介!!」


「っと悪い」


「ったく。お前も体調悪いのか?

昨日の夜から変だぞ」


「大丈夫だ。悪かった」



宗介が歩き出すと

凛は不満そうにその後ろについて行く。



「(人1)は泊まり込みで仕事してるから

学園内にいるぞ。部屋なら寮長室の奥だ。

寮長に話を通せば入れてくれると思う」


「........は?」



宗介の反応に

凛は面倒くさそうに唸ってから言葉を足す。



「だーかーらー。

心配なら顔だけ見てこればいいだろ。

ほら、これで飲み物でも買って渡しに行け!!」



凛は財布から千円札を取り出して

宗介の胸に押し当てた。

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作者名: | 作成日時:2018年9月4日 22時

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