第16話 ページ16
声を震わせて、
しかし、ハッキリと告げる(人1)。
「凛にも、誰にも言うつもりは無い。
だからお前も言うな。いいな」
コクコクと頷くのを確認すると(人1)の肩を離す。
ズリズリと
自販機に背をあずけながら座り込む(人1)。
「話はそれだけか」
「はい...」
「余計な事は言うんじゃねえぞ」
宗介はその場をあとにしようと踵を返した。
「や、山崎くん」
「んだよ」
宗介は振り返らず返答する。
しばらく間を開けた後に(人1)は口を開く。
「...苦しい時は...苦しいって言ってほしい...
教えて欲しいと思うよ...辛いってこと...
私がそうだったから...だから...」
「これは俺の問題だ」
遮るように口にすると
それ以上(人1)は何も言わなかった。
背を向けたままだったから
どんな顔をしているか分からなかった。
知りたいとも思わなかった。
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「お、宗介。遅かったな」
脱水所に行くと凛に声をかけられる。
「別に」
「ん?コーラ買わなかったのか?」
宗介の手元を覗き込みながら凛は口を開く。
「あー...売り切れだったんだよ。
ほら、混みだす前に風呂入るぞ」
「宗介。コーラ売り切れだったぐらいで
そんな怖い顔すんなよ。
(人1)が見たら怖がるだろ」
ピタリと服を脱いでいた手が止まる。
「あいつは関係ねえだろ」
「宗介?」
浴場に向かう
親友の背中を見て凛は眉をひそめた。
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「(人1)。おはよう」
「あ、凛くん。おはようございます」
振り返った顔を見て凛は真剣な顔を向ける。
「どうした。泣いたのか?」
「へっ?あ...えっと...」
のぞき込む凛から顔を逸らし、
赤く腫れる目を細めながら笑う。
「昨日見た映画が
思った以上に感動的で...やっぱり分かる?」
「んだよ。涙脆いんだな」
「えへへ。
凛くんは泣き虫って聞いたよ?」
「って誰からそれ聞いた!
じゃなくて、俺は泣き虫じゃねえからな!!」
凛の顔を見てクスクスと笑う(人1)。
会話する二人の横を
通り過ぎる長身の男に気づき、(人1)は声をかける。
「山崎くん。おはようございます」
「...ああ。
凛。遅れるぞ」
短くそう言うとスタスタと過ぎ去る宗介。
「ちょっと待てよ宗介!
じゃあな(人1)。行ってくる」
「うん。いってらっしゃい」
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作者名:学 | 作成日時:2018年9月4日 22時