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第16話 ページ16

声を震わせて、

しかし、ハッキリと告げる(人1)。



「凛にも、誰にも言うつもりは無い。

だからお前も言うな。いいな」



コクコクと頷くのを確認すると(人1)の肩を離す。

ズリズリと

自販機に背をあずけながら座り込む(人1)。



「話はそれだけか」


「はい...」


「余計な事は言うんじゃねえぞ」



宗介はその場をあとにしようと踵を返した。



「や、山崎くん」


「んだよ」



宗介は振り返らず返答する。

しばらく間を開けた後に(人1)は口を開く。



「...苦しい時は...苦しいって言ってほしい...

教えて欲しいと思うよ...辛いってこと...

私がそうだったから...だから...」


「これは俺の問題だ」



遮るように口にすると

それ以上(人1)は何も言わなかった。

背を向けたままだったから

どんな顔をしているか分からなかった。

知りたいとも思わなかった。


_____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____



「お、宗介。遅かったな」



脱水所に行くと凛に声をかけられる。



「別に」


「ん?コーラ買わなかったのか?」



宗介の手元を覗き込みながら凛は口を開く。



「あー...売り切れだったんだよ。

ほら、混みだす前に風呂入るぞ」


「宗介。コーラ売り切れだったぐらいで

そんな怖い顔すんなよ。

(人1)が見たら怖がるだろ」



ピタリと服を脱いでいた手が止まる。



「あいつは関係ねえだろ」


「宗介?」



浴場に向かう

親友の背中を見て凛は眉をひそめた。


_____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____



「(人1)。おはよう」


「あ、凛くん。おはようございます」



振り返った顔を見て凛は真剣な顔を向ける。



「どうした。泣いたのか?」


「へっ?あ...えっと...」



のぞき込む凛から顔を逸らし、

赤く腫れる目を細めながら笑う。



「昨日見た映画が

思った以上に感動的で...やっぱり分かる?」


「んだよ。涙脆いんだな」


「えへへ。

凛くんは泣き虫って聞いたよ?」


「って誰からそれ聞いた!

じゃなくて、俺は泣き虫じゃねえからな!!」



凛の顔を見てクスクスと笑う(人1)。

会話する二人の横を

通り過ぎる長身の男に気づき、(人1)は声をかける。



「山崎くん。おはようございます」


「...ああ。

凛。遅れるぞ」



短くそう言うとスタスタと過ぎ去る宗介。



「ちょっと待てよ宗介!

じゃあな(人1)。行ってくる」


「うん。いってらっしゃい」

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作者名: | 作成日時:2018年9月4日 22時

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