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仕事に向かう龍之介を玄関で見送るとAも外に出る為にメイクをして家を出る


『……。』
緊張する。
来てくれるかな……


着いた先は柚羽の職場近くのカフェだった
そこでアポイントは一応取れたものの会えるかは分からず緊張していたA


「……何の用?」


『忙しい中時間取らせてごめんなさい。
ゆ…桐矢さんにどうしても話したい事があるんです。』



震える手に力を込めて右手で左手を抓りながら気持ちを落ち着かせる




「…別れたの?」


『ううん、別れてない。
色々考えたの。柚羽の言った通り別れた方がいいのかもしれない、そう思う事もあった。


でもごめんなさい。私にとってスイーツを作る事も、龍くんと別れる事も出来ない。』


「っ、それはずるいでしょ。何言ってんの!?」


『うん、ごめんなさい。ずるい…自覚はある。
でも諦められない。龍くんは今私にとって唯一の家族で私が出来る限り支えて生きたい人なの。
スイーツ作りも、私から取れば何も出来なくなる。』


「私から奪った癖に」


『……うん。何も言い返せない。』


「最低。」


『うん。ごめんなさい。』


「何で素直に謝るの。理不尽だって言いなよ。」


『……私は一生を掛けて桐矢さんに謝らないといけないから…。これは理不尽なんかじゃない。至極真っ当な事で桐矢さんが私に訴えていい事。それくらい私は柚羽から大切なものを奪った。』



でも、と続けて立ち上がると頭を下げるA


『ごめんなさい。龍之介くんとのこれからの生活とスイーツ作りは諦められない。どれだけ罵られて批難されても……。
私にはこの2つしか残ってない。』


「そんな事ないでしょ。あれだけ成功しておいて」


『成功……かは分からない。ずっと褒められる為、認めてもらう為に頑張ってきたから。
柚羽に恨まれるのは百も承知の上だった。


でも、それでもあの時柚羽が言ってくれた“いつでも見てる”って言葉にいつどこで柚羽に見られても完璧でいれるようにしてきた。
柚羽のその言葉は魔法みたいに常に頑張れた。苦しい事もあったけどそんなの考えられないくらい。


私をここまで動かしてくれた原動力になった。


ごめんなさい。…それとありがとう、凄く感謝してる。柚羽からすれば腹立つかもしれない。
でも最後になったとしてもしっかり言いたかったから。』

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作者名:reina | 作成日時:2020年11月12日 2時

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