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帰る為にカバンと説明を受けたパンフレットを持って席を立ち外に出た時A、と声を掛けられる
『え、』
柚羽「久しぶり、Aニコ」
『ひ、久し振り…』
覚えてた。柚羽も気付いてた……
柚羽「最初会った時から気づいてたよ。A全然見た目変わってなくてビックリだよ(笑)」
『わ、たしも柚羽だって…気付いてた……。柚羽…ごめんなさい。』
柚羽「結婚したんだよね、TRIGGERの十龍之介さんと。」
じっと睨む様に見つめられドクドクと心臓が脈を打つ音が聞こえる様な錯覚に陥る
『……うん。』
柚羽「ズルいよね、Aは順風満帆で。」
『え、?』
柚羽「見てたよ。世界ケーキグランプリもずっと。まさか中学高校ずっとパリ本校にいるとは思わなかったけど。
でもAは天才だったもんね、いつも先生からの評価が段違いに高かった。
しかも十龍之介と結婚するなんて思わなかった。いいね、詩音さん芸能人だったし。
……羨ましいよ、私はアレからずっと辛かったのに。麻痺した左手と体のリハビリも凄く大変だったのに。」
キッと睨まれ思わずビクッと驚く
『っ、ごめんなさい。』
柚羽「謝って済む訳ないでしょ?
あの日から私の人生は狂った!
家族からはいつも生暖かく見られて、なんでAは幸せになってるの?なんで結婚したの??」
『……。』
なんで結婚したの…か、……分かんない。
あれ、分かんない……謝らなきゃ。私が悪いんだから…謝らないと。
私が柚羽を傷付けたから。
『柚…桐矢さん……私が、桐矢さんに一生消えない傷を残してしまって本当にごめんなさい。謝って済むなんて思ってない、でも謝る以外の方法は分からない…。本当にごめんなさい。』
柚羽「謝るんじゃなくて示してよ。
別れて、十さんと。」
『ッ…』
柚羽「別れて一生幸せにならないで。
一生スイーツも作らないで苦しんで。幸せそうに笑うなんて許せないから。
では、本日はありがとうございました。ニコ」
『……ぁ。…失礼します。』
暫く歩き路地の奥に少し入るとドッと力が抜ける
『ハッ、っ、泣くな……泣くなA…っ。』
外で泣いたら危険だし、私が泣く資格なんてない。
怖い、どうしよう。どうしたらいいの…
なんで私幸せになれるなんて思ったの?
…早く帰らなきゃ……龍くん熱があるのに…。
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作者名:reina | 作成日時:2020年11月12日 2時