スターな君との恋事情【天馬司】

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先輩はチョコレートが人並みに好きらしい。それならバレンタインに渡されても困らないだろうか。
……あの人なら、何を渡したって喜んでくれそうだ。

2月も中盤に差し掛かろうとしている今、わたしが訪れたのは学校のある駅よりもいくつか先の駅にある、あの雑誌に載っていた有名店だ。
長蛇の列を見てもあまり嫌にならないのはなぜだろう。無趣味のわたしには、時間が無駄になる苛立ちというものがないからかもしれない。
並ぶこと30分ほど、ようやく店内に入ることができた。

陳列棚に並ぶチョコレートを眺める。色々な味の詰め合わせに、宝石のような粒の揃ったトリュフ、一口サイズの可愛らしいものなど、様々な種類があった。
どうしたものかと考えていると、レジ横に置いてあるポップが目に入った。

『2/14は大切な人に想いを伝える日！ 感謝の気持ちを込めて、あなただけの贈り物を』

その文言に惹かれて、つい手に取ってしまった。
そして気が付いたときには、会計を終えて店の外に出ていた。

「……」

手の中にある小さな紙袋を見下ろして、少しの間考える。
わたしが先輩に伝えるべき想いって、あるのだろうか。
……まあ、日頃の感謝かなと結論づけて、帰路についた。

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