約束は守る男なので ページ49
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それから、今までの話を聞いた。
詳しくは言えないが、ある組織に潜入していた事、情報収集のためにポアロに来たこと、あの爆発の時すんでのところで下の池に飛び込んで助かったこと…
勿論あの男も無事で、その男の情報のおかげで組織と決着をつけられたこと。
私の知らない彼がそこにはいて、胸にあった小さな引っかかりや違和感が解けていく。
「あの時君にいなくならないでくれ、と言われてなにも言えなかったのは安室透がいつか消える偽りの存在だったからだ。
勿論、僕自身の明日にも絶対はないし、この話だって隠し通すつもりだったからね…」
あの時はほんの一部分しか見えてなかったものが、徐々にひらけていくように。
「確かに、君に近づいたのも初めは情報収集のためだった。君の指摘通りそういう感情は持ってなかったよ…でも」
____それは
『___え?ふ、ふるやさ…』
するりと指が絡まる。
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「僕は…君が思う以上に、一人の男として…降谷零として…あなたが…Aさんのことが好きで、特別に思ってます」
これは夢を見てるんじゃないか、なんて。
思わず頬をつねるけど残るのは痛みと熱だけで。
『う、嘘…』
「嘘じゃない。言っただろう、嘘はバレないから意味があるって。この気持ちひとつ隠すのに、こんなに苦労するなんて思ってもなかったがな…」
ぽろりと、また涙が落ちた。
それが大きな手に掬われる。
「たしかに僕はたくさん嘘をついたけど…全てが嘘だったわけじゃない。安室透だって僕の一部だし、どうしようもなく君に惹かれるこの感情だって、ちゃんとここにある」
『っ、は…は……ほんと、ずるい人だなぁ』
「…僕はずるい大人だよ」
絡まったまま口元に寄せられた指先に、唇が落ちる。
そこから伝わる熱は夢なんかじゃなくて。
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「僕は君に、絶対の明日を保障することはできない…けど、この命がある限りは…明日だって、明後日だって、その次だって…君のことを必ず守るし、絶対に君のもとに帰ってくるって、約束する」
だから、
「____僕に、君の明日をくれないか」
そんなの、あなたが望むならいくらでもくれてやる。
答えなんて一つしかないんだから。
その代わり、
『約束っ、破ったら一生許してやりませんから……!』
「あぁ、望むところだ」
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約束は、守る男なので。
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山梔子(プロフ) - ミモさん» ミモさん、初めまして。コメありがとうございます。色んな感想をお持ちいただけて嬉しいです。よろしければこちらの続編も今とは少し違うテイストになりますが読んでみて下さい^^ (2019年6月14日 10時) (レス) id: 5b80796d59 (このIDを非表示/違反報告)
ミモ(プロフ) - こんなにもどかしい思いをしたり、ハラハラドキドキしたり、感動したり……。こんなにたくさんの感情にさせられた物語に出会えて、今とても幸せです。あなたに、あなたの書いた小説に出会えて良かった。連載お疲れ様でした。 (2019年6月13日 21時) (携帯から) (レス) id: 0c3426b0a6 (このIDを非表示/違反報告)
山梔子(プロフ) - リンドウさん» リンドウさん初めまして。唯一の楽しみとまで言っていただけるとは…本当にありがとうございます。長らくお待たせしてしまい申し訳なかったです。お付き合い頂きありがとうございました! (2018年11月22日 12時) (レス) id: 1444a1608d (このIDを非表示/違反報告)
リンドウ - 本当に素晴らしい作品をありがとうございました。山梔子さんの作品が唯一の楽しみで夢主ちゃんと降谷さん二人のもどかしい想いがついに結ばれて良かったです。お疲れ様でした!! (2018年11月21日 23時) (レス) id: 282d8947f2 (このIDを非表示/違反報告)
山梔子(プロフ) - 夜空。さん» 夜空。さん初めまして。コメありがとうございます!そう言われると書ききった甲斐がありました(^○^)次回作は宣言通り夏のお話を一つ、と書いているところですのでまたよろしくお願いいたます。 (2018年11月20日 1時) (レス) id: 1444a1608d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:山梔子 | 作成日時:2018年6月22日 12時