君を思う-19 ページ43
.
____さん、
Aさん………
誰かが私の名前を呼んだ気がした。
どこか暖かさを含んだ声は聞き覚えがあるのに働かない頭では誰なのか全く思い出せない。
ふわふわとした意識の中で、心地のいい波の音のような、優しい凛とした声に耳を傾ける。
ぼんやりとその声の主が見える気がした。
ゆらゆら揺れる影にも見覚えがあるはずなのに、何かが邪魔をしてよく見えない。
____全てが終わったら、ちゃんと…だからそれまで、
『ぁ、待っ…て……』
いかないで、
ようやく絞り出した声は掠れていて、伸ばした手は空を切った。
歪んだ視界に、邪魔をしていたのは涙だと気がつく。
____待ってて。
嫌だ、いかないで、
『いかないで、』
………____安室さん
もう一度伸ばした手の先に、光が弾けた。
.
煌々と白い光が降り注ぐ。
人工的なそれが眩しく感じて、つい顔をしかめる。
『____ぅ、ん、』
「あ、Aさん!?気がついたっ、ちょ、蘭!先生呼んできて!」
「わ、分かった!」
「Aさん、わかる!?園子よ園子!」
聞き覚えがある声と顔と、まだ少し働かない頭の中でそれが一致していく。
『園子ちゃん…ここ…』
ようやく定まった視界で、白で統一された室内ちらりと確認する。
病院だ、とすぐに分かった。
ただそれでも、まだぼんやりした頭ではどうしてこうなっているかが曖昧で思い出せない。
確か赤井…さんが…
『園子ちゃん、ここに運んでくれたのって____』
「園子!連れてきたよ!」
そう聞きかけたのと同時だった。
パタパタと走る音と一緒に蘭ちゃんが白衣の男性を連れて病室に戻ってきた。
話を聞けばあれから丸3日、私は目を覚まさなかったらしい。
怪我が酷いわけではなく事故によるなんらかのショックによるものではないか、と告げられた。
『…………』
やっぱり夢ではなかった。
自分の体に繋がる管を見て顔を伏せる。
じゃあ、安室さんは?
これが夢ではないのなら、彼は
「あっ、そういえば…」
『っ、あ、なに……?』
園子ちゃんの声にハッとして顔を上げれば、ポケットから何かを取り出した。
「これ、Aさんに渡してくれって……」
そう言って手渡されたのは少し傷が入ったシルバーに琥珀色の石がついているストラップ。
『これ………』
安室さんの…
じゃあ、
『これ、誰が……!』
「えっ?それなら_______」
.
1378人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山梔子(プロフ) - ミモさん» ミモさん、初めまして。コメありがとうございます。色んな感想をお持ちいただけて嬉しいです。よろしければこちらの続編も今とは少し違うテイストになりますが読んでみて下さい^^ (2019年6月14日 10時) (レス) id: 5b80796d59 (このIDを非表示/違反報告)
ミモ(プロフ) - こんなにもどかしい思いをしたり、ハラハラドキドキしたり、感動したり……。こんなにたくさんの感情にさせられた物語に出会えて、今とても幸せです。あなたに、あなたの書いた小説に出会えて良かった。連載お疲れ様でした。 (2019年6月13日 21時) (携帯から) (レス) id: 0c3426b0a6 (このIDを非表示/違反報告)
山梔子(プロフ) - リンドウさん» リンドウさん初めまして。唯一の楽しみとまで言っていただけるとは…本当にありがとうございます。長らくお待たせしてしまい申し訳なかったです。お付き合い頂きありがとうございました! (2018年11月22日 12時) (レス) id: 1444a1608d (このIDを非表示/違反報告)
リンドウ - 本当に素晴らしい作品をありがとうございました。山梔子さんの作品が唯一の楽しみで夢主ちゃんと降谷さん二人のもどかしい想いがついに結ばれて良かったです。お疲れ様でした!! (2018年11月21日 23時) (レス) id: 282d8947f2 (このIDを非表示/違反報告)
山梔子(プロフ) - 夜空。さん» 夜空。さん初めまして。コメありがとうございます!そう言われると書ききった甲斐がありました(^○^)次回作は宣言通り夏のお話を一つ、と書いているところですのでまたよろしくお願いいたます。 (2018年11月20日 1時) (レス) id: 1444a1608d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:山梔子 | 作成日時:2018年6月22日 12時