半分も伝わらない-3 ページ15
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『それで、何を買うんですか?』
少しの距離を置いて店内を歩く。それとなく洋服を見ているが、私が普段着ている服よりも大人っぽいデザインが多いみたいだ。
「知人の女性にプレゼントを、と思いまして」
『へぇ…え、それ私ついてきてよかったんですか?』
それまさか彼女さん、とかじゃないよね…?
だとしたらこれはNGな選択であるということだけは間違いないが。
「あぁ、恋人へのプレゼントというわけではないので…Aさんには少し意見と、あとはどんな感じか合わせてもらえればと思いまして」
『そう、ですか……?』
それじゃあ私の好みが多少影響されるし、相手と私ではかなり雰囲気もかわるのでは。
とも思ったが、なんでも付き合うと言ったわけなので大人しく頷いた。
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「………ふむ、これもいいな…」
『これ、私に合わせて参考になるんですか…?』
何着か渡されるまま試着してみたが、いつも基本的にパンツスタイルでラフな格好が多いから、ワンピースやシフォンスカートなどはなんだか落ち着かない。
確かに可愛いし、一度着てみたいと思ったこともあるがこんな機会でなければ着ることはなかっただろう。
沖矢さんは天然のせいかやたらと綺麗だとか似合うだとかこれでもかというくらい褒めてくるし、前から気になっていたが時折口調も崩れたりと余計に落ち着かない。
「Aさんは今の中ならどれがお好みでしたか?」
『うーん…普段と違うテイストだからな…あ、でもこれとこれの組み合わせは好きだなって思いました。今の季節に合いそうだし』
「ではそれにしましょうか。少し待っててください」
『え?はい…』
そんな簡単に決めていいのだろうか。仮にもプレゼントだし意見というか最早私が決めてしまったのだけど。
試着室近くで他の服をそれとなく眺めていると、服を買い終えたのか沖矢さんが戻ってきた。
「お待たせしました。それでは、これを」
『………はい?』
戻ってくるなり沖矢さんが手に持った紙袋を私に差し出す。
これはまさに今、私が選んで沖矢さんが買ってきた服、だけど、え………それっていうのは?
「僕からAさんへプレゼントです」
『え、知り合いの人じゃ』
「ですから、Aさんに。せっかくなので着てくれると嬉しいのですが?」
『う……』
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山梔子(プロフ) - ミモさん» ミモさん、初めまして。コメありがとうございます。色んな感想をお持ちいただけて嬉しいです。よろしければこちらの続編も今とは少し違うテイストになりますが読んでみて下さい^^ (2019年6月14日 10時) (レス) id: 5b80796d59 (このIDを非表示/違反報告)
ミモ(プロフ) - こんなにもどかしい思いをしたり、ハラハラドキドキしたり、感動したり……。こんなにたくさんの感情にさせられた物語に出会えて、今とても幸せです。あなたに、あなたの書いた小説に出会えて良かった。連載お疲れ様でした。 (2019年6月13日 21時) (携帯から) (レス) id: 0c3426b0a6 (このIDを非表示/違反報告)
山梔子(プロフ) - リンドウさん» リンドウさん初めまして。唯一の楽しみとまで言っていただけるとは…本当にありがとうございます。長らくお待たせしてしまい申し訳なかったです。お付き合い頂きありがとうございました! (2018年11月22日 12時) (レス) id: 1444a1608d (このIDを非表示/違反報告)
リンドウ - 本当に素晴らしい作品をありがとうございました。山梔子さんの作品が唯一の楽しみで夢主ちゃんと降谷さん二人のもどかしい想いがついに結ばれて良かったです。お疲れ様でした!! (2018年11月21日 23時) (レス) id: 282d8947f2 (このIDを非表示/違反報告)
山梔子(プロフ) - 夜空。さん» 夜空。さん初めまして。コメありがとうございます!そう言われると書ききった甲斐がありました(^○^)次回作は宣言通り夏のお話を一つ、と書いているところですのでまたよろしくお願いいたます。 (2018年11月20日 1時) (レス) id: 1444a1608d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:山梔子 | 作成日時:2018年6月22日 12時