勘違いの始まり-14 ページ25
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安室さんと視線が交わる。
聞き慣れた甘い声が鼓膜を揺らした。
『なん……ですか?』
気を抜けば吸い込まれてしまいそうだ。それでも何故か目を逸らせない。
こんなにジッと顔を見たのは初めてかもしれないと思った。本当に綺麗な色、安室さんの色だ。
「また.、……いや、やっぱりなんでもないです」
『えっ、ちょ、なんですかそれ…』
何を言われるのかと少し緊張したのに。
何か言いかけた口は少しの間を置いてその緊張を蹴り飛ばした。
『いつも思ったことも思ってないことでも何でもぽんぽん言うじゃないですか』
「さりげなく失礼だな……」
あはは、と誤魔化すように笑う安室さんはなんだか変だ。いつも通り、何かあるなら言えばよかったのに。
また、……のあとは、なんて言おうとしたんだろう。と、私はふと考えて笑った。
人の気持ちを汲むのは苦手ではない。ただ、自分の勘違いではあるかもしれないが。
それが例えば本心でなくとも、言おうとしたことならば。
奥にしまわれてしまった言葉を、いつもの仕返しに引っ張り出してやってもばちは当たらないだろう。
『安室さん』
「?はい、なんですか?」
普段何を考えてるのか分からない安室さんが、ここまで分かりやすい風にしているのは今この瞬間だけかもしれないから。
『また…また一緒に、ここの、この景色。
見に来てもいいですか?』
「!………はは、君には敵わないな…」
私の言葉に目を見開いた安室さんは、すぐにふっと力の抜けた顔で笑った。
…あ、またいつもと違う笑顔だ。
『安室さん、普段って本当に何考えてるか分からないですし適当なことばっかり言うけど、たまに分かりやすいですよね』
「Aさんも中々ズケズケ言いますね…」
『まあ、自覚はあります』
なんやかんやと言い合って、お互いにぷっと吹き出す。お互い干渉し合わない関係が心地いい、とは言ったがこれもこれで嫌いではないかもしれない。
もとといえば安室さんの軽口が勘違いを引き起こしての今日だが、そのおかげで普段なら知り得なかった部分もたくさん見つけた気がする。
降り場が近づくのに多少残念さを感じながら、たまにはこんな日も悪くはないと無意識にストラップを見つめて思うのだった。
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山梔子(プロフ) - 真紅さん» 真紅さん初めまして。コメありがとうございます!頑張ります〜(^○^)! (2018年6月20日 0時) (レス) id: 1444a1608d (このIDを非表示/違反報告)
真紅(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください! (2018年6月19日 16時) (レス) id: f5ab8da157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:山梔子 | 作成日時:2018年5月24日 23時