第5話 ページ6
No Side
ーーーーーーーーーー
「これはこれは…中々の出来じゃ！！」
一人の少年が横たわる部屋をガラス越しに眺めて、一人の医者が狂ったように踊り出す。くるくるくるくる回り続けるのを感じてか、PCを通して死柄木はイラついたような声を発した。
「何言ってんだよドクター、全然起きないんだろ？」
もう３週間だと首を引っ掻き続ける音を聞いて、ドクターと呼ばれた医者は予定通りじゃと言い放つ。
「個性因子を生み出す造血幹細胞を移植したのだから、3週間も無菌室にいるのも当然じゃわい」
血管内部は戦争状態だからいつ目覚めるかはお楽しみじゃな。
笑いを含んだような声に、死柄木は嫌な結論に行き着いて首を引っ掻く手を止めた。
「……まさか成功する保証もなく手術したわけないよな？」
「まさか。ワシがそんなヘマをするものか」
死柄木の大事な仲間。他の人間で実験してからメスを入れるに決まっているだろうと言うドクターに、彼はとりあえず心を落ち着けたようだった。
＿＿＿＿そんな一言で一般人なら心が落ち着くはずはないのだが、それが彼ら敵の日常だ。
首元から手を離す死柄木を見て、ドクターは再び口を開く。
「目覚める兆候があれば、すぐに黒霧に送り返させればいいじゃろう」
短気になるのはいかんと諭すように言われて、死柄木はイラついたのかブチっと通信を遮断した。
若い、と呟いて静かになった部屋で体を揺らすドクター。
まぁ入試前には目を覚ますのは確かだと言って、横たわる彼とは反対側の病室に視線を移す。
……その部屋には、ドクターが実験台にした “消えても大して問題の無い” 人間たちが山積みに折り重なっていた。
「実験では思わぬ副産物もできたからの」
実験隊にされたものの中には、思わぬ作用を持ったものもいた。
それはきっと、素晴らしいものをもたらすだろう。
これから楽しみじゃわい、と笑みを浮かべるドクター。
その悍ましい顔を知る人は誰一人いなかった。
ーーーーーーーーーー
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 183人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきや(プロフ) - 千椛さん» コメントありがとうございます！遅くなってすみません、少しずつ更新できたらと思っております。 (2022年9月7日 22時) (
レス) @page3 id: d2fcd45d7d (このIDを非表示/違反報告)
千椛(プロフ) - 更新楽しみに待ってます！ (2022年9月2日 18時) (レス) @page2 id: 5a2d0a48cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきや | 作成日時：2022年8月26日 3時
