【銀魂】おはよう、愛しき人よ

番外篇12 ページ45

『晋助さんのバカ！頭を冷やしてください』


そう言って、俺を突き放した

夫婦になって初めての喧嘩

事の発端は、俺が仕事を詰めすぎて夕飯を一週間食べなかった事が原因だ


『あれほど何か食べてくださいって言ったのに！

不健康です！この際ですが、煙草もお酒も！』

長生きしたくないんですか、と涙目で言われた時は

俺はAと長く生きる為に、今後一切それらを絶ってしまおうかと考える


頭を冷やせと言われて、どうするべきか分からなかったから、とりあえずあの海に世話になった

食べてくださいよ、と言われた所までは何ともなかったんだ

その後誤魔化そうとして、俺がAを抱き寄せてしまった事にアイツは怒っている


…しかしまァ、仕事がひと段落つき肩の荷が降りたから、愛の一つでも囁こうかと調子に乗ってしまっただけ


『頭を冷やす…ね』

何となく海に近付いて、靴先が波打ち際に触れるか触れないかの距離

すると、勢い良く後ろから手を回された


『本当に頭を冷やそうとしないで下さい』

『しねェよ』

『なら良かった。風邪引いちゃいますもん』

振り向くと、へらっと笑うAがいる

もう怒ってないのか…いや、あの時も顔を真っ赤にはしていたが、本気で怒っていた訳ではないのだろう


『寒くないですか？』

『お前がそのままでいたら、寒くない』

『では、このままで』

ふふっと声を洩らし、俺を抱きしめる力を強める

不意に、こうした方が温かいと言って俺の正面に回った

だから俺も、Aの背に腕を回す


『見てください、星が綺麗です』

温もりが俺から離れてしまい、薄ら寂しい

目の前の彼女は、空を指差した


『そうだな』

『嘘ですね、星なんて見てないじゃないですか』

『見てるよ

お前の目の中に映ってる』

見えるんですか、と俺の目の中を覗く


『私しか映ってないです』

『そりゃ最高の殺し文句だな

だが当たり前だろ。俺は今、星を見てねェ』

俺が見ていたのは目の前にいるAで、星は二の次だ


『こんな綺麗な星、もう見れないかもしれませんよ

私は明日も見れるじゃないですか』

『今日のお前を見れるのは今日だけだ』

『何ですか、恥ずかしい…』

途端に頬を紅に染め、俺から視線を外らす

こっちを向けと額を合わせれば、恐る恐る視線を交わらせた


『家に帰ったら、直ぐご飯にします』

『飯の後は』

『ゆっくりお風呂にでも』

『なら、その後は』

『一緒に寝ましょう。』

『それはいいな。』

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