【銀魂】おはよう、愛しき人よ

番外篇8 ページ40

『おはよ、土方くん』


待たせたか、と近寄るが首を横に振る


『今来たところ』


そう言って、行こうと歩き始めた


『映画見るの久しぶり』


誘ってくれてありがとう


『俺も見たかったし』


そうして入る映画館

見るのは恋愛系で、柄にも無く選んでみた

この方が喜ぶと思ったからだ



『良かったね、二人が結ばれて』


映画が終わり、そんな会話を周りがしている中

Aは不服そうな顔を見せる


『確かに想い合う二人が結ばれて良かったけど…

でも、それを手助けしたあの男の人も幸せになる終わりが見たかったな』


『見てない所で幸せになるよ』


そうだね、と頷くA

俺達は映画館を出て、近くのカフェに入った


『お二人は恋人同士ですか？』


店に入ると、開口一番にそう聞かれる


俺らが固まっていると、店員が説明してきた



『今月恋人同士で御来店いただきますと、特別にケーキをサービスさせて頂いております』


Aは俺の方を見上げるも、目を忙しなく動かす



『恋人同士です』


Aは甘い物が好物だし

どうせ恋人同士という名ばかりだろう

それで無料になるなら、いい事だ

いいだろ、とAを見ると頬を少し紅く染めている

こんなんで恥ずかしがるなと思ったが、俺も俺で今更恥ずかしく感じた


『い、許嫁だからな』

一応、と付け足すが、だからなんだ

許嫁は別に恋人同士ではないだろ

俺の苦し紛れの言い訳に、Aはぎこちない笑みを浮かべる


『ケーキもお選びください』

飲み物を注文した後

店員はそう言って、ケーキのメニューを見せた


Aはどれにしようか悩んでいる


『土方くんは決まった？』

『あー…

俺食わないからお前食べていいよ』


Aは驚いた顔をしたが

ほら、とメニューをAの方へ寄せると

小さく頷き、二つ選んだ


『ごめんね、土方くん甘い物好きじゃないよね』

『どうせタダなんだろ？』

関係ねェよ


『ありがとう、土方くん』



……その時は

ああ、このまま夫婦になれればいい

なんて、馬鹿なことを考えていた


俺達なら上手くいくと思ってたんだ

どこにも、愛情がないのにだぞ？


少なくとも俺が好意を持っていたとして

一方通行では意味が無いと

そう教えてくれたのは、結局あの二人だった


今じゃァ両想いの二人だけどな



貰った土産の中に、コーヒーが入っていた


俺はそれを見ながら

逆の手で、携帯電話を弄る



『今美味いコーヒー貰ったんだ

飲みに来ないか？』

番外篇9→←番外篇7

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す