運命のヒト (ページ27)

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あやな))…何ですか、それ
敬))臣ちゃんさ、ずっと好きな人居たんだけどこの前振られたらしくてさ
あやな))…好きな人？
敬))あの臣ちゃん振るなんて、相当な子だよね

俺だったら泣いて喜ぶのに。と言う敬浩さん。

…臣の好きな人って、誰だろう。

そういや、彼女が居たけど、他に好きな子が居るから直ぐに別れてたって、前に敬浩さんが言ってた。

そんなの想い焦がれてたのに、振られた？

だから、あの時あんなに不機嫌だったの？

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敬))…気になる？

敬浩さんのその一言に、ふと我に返った。

敬))気になる？臣ちゃんの事。
あやな))…そういう訳じゃ、
敬))シワ、

とん、と人差し指が私の眉間をつついた。

敬))寄ってるよ？怖い顔してる
あやな))っ、
敬))臣ちゃんの事、好き？

そう言って、寂しげな表情を浮かべる敬浩さんに、吸い込まれそうになった。

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…好きなんかじゃない。

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あやな))好きじゃ…ないです

視線を落として呟くように言えば、敬浩さんはまた表情を変える。

敬))…なんてね
あやな))…あの、
敬))ごめんね、こんな話して。今のは聞かなかったことにして

いつの間にか、いつもの笑顔に戻った敬浩さんはそう言った。

先程とは違う空気が漂う中、違うお酒にしようかなーと言いながらリストを見つめる敬浩さんを、黙って見つめる事しか出来なかった。

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帰り道。

二人並んで静かに歩く。

何だかその沈黙が嫌で、私は足元へ下ろしてた視線を上げた。

あやな))敬浩さん、あの！
敬))ん？

視線が合えば、立ち止まってニッコリといつもの笑みを見せてくれる。

そんな敬浩さんに、どんどん惹かれる自分が居るというのに。

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あやな))私…

さぁ早く言ってしまえ。

そう思うのに、言葉が口から出なくて。

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敬))俺さ、気長に待てるタイプじゃないから

しどろもどろしてると、敬浩さんが口を開いた。

敬))でも何でだろうね
あやな))へ…？
敬))今はまだ言えねーや

そう言って苦笑する敬浩さん。

敬))おやすみ、あやなちゃん

チュ、と額に一つキスを落としてから、｢またね｣と彼は背中を向ける。

その背中が何だか寂しげで。

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でも、どうしてだろう。

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追いかけようと思うのに、引き止めたいと思うのに、足は動かない。

ズキン、と痛むこの気持ちは、なんて言うのだろうか。