赤井秀一の悪友4th【名探偵コナン】

Rotten apple ページ9

「あら、ニーナ…噂をすればシュウからよ？」

『…適当に言っといて』

私が着信に気付かないもんだから、痺れを切らした彼はジョディにかけてきたらしい。通話を始めた彼女を横目に私は両手の指先を合わせて目を閉じ、また思考の海を漂う。

「ええ、そう。ちょっと色々あってね…。あなたの相棒なら隣でウイスキー片手にいつものポーズで考え事してるわよ？え、銘柄？知らないわよそんなの」

あと少し、決定打が少し足りない。まだ動くには早すぎる。

「標的名？そうねえ…"Rotten apple"…"腐ったリンゴ"にでもしておきましょうか…良いわよね、ニーナ？」

『…え、何、標的名？別に何でもいいんじゃない…』

不意打ちで話を振られて、反応が遅れた。ジョディが仕方ないな…という呆れの表情でため息をついて、手にしていたリンゴを投げ渡してくる。

「明日の朝、迎えに来るそうよ？しきりに今飲んでるそれの銘柄知りたがってたけど、言わないでおいたわ」

『…うん、それはほんとにナイス。ライじゃなくてスコッチ飲んでたなんて言ったら後が怖い』

そうでなくても彼は、昔から好んでいたスコッチをヒロの保護の一件から自粛しているのだ…。私だけ彼以外の銘柄のウイスキーを飲んでいたのがバレたら、めんどくさい事になるに決まっている。バーボンじゃなかっただけ良かったと思ってほしい。

「声じゃ分かりにくかったけど、少しいつもより怖かったかしら。ちょっと意外ね」

『ジョディにもそう感じられたなら、わりかし不服なんだなあいつ…明日どう誤魔化したものか』

「…贅沢な悩みねえ。私たちには素っ気ないのに、あなたが絡むとまだ喋ってくれるのよね。もう少し普段から口数を増やしてほしいものだわ」

『うーん…一応言っておくけど難しいんじゃないかな。あいつ、基本的に伝わる事しか言わないから』

ジョディが私の言葉に首を捻るが、それ以上は言わないでおいた。彼曰く、私が理解出来れば充分だと。彼女たちが理解するまでに話すには、自分では言葉が足りないから…ならば初めから自分が語る手間は無意味だと言うのだ。

『(要は、あいつが頭良すぎて小難しい言葉しか言えないから、理解の及ばない周囲とのやり取りは私に丸投げって事なんだけど…。私もだいぶ甘いな)』

私は彼の思考についていける数少ない人間だが、幸いにも噛み砕いて説明する能力には長けていた。上手くバランスは取れているが、もう少しくらい彼も周りと打ち解けてもいいのでは…とは思っている。

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