赤井秀一の悪友4th【名探偵コナン】

銀弾は微笑む ページ30

毛利探偵事務所を見下ろせるこの地点、その距離実に700ヤード。私の読みが正しければ、ここから見える位置に奴らは現れるはずだ。ライフルを持つ手が、興奮で少し震える。

「少し落ち着け」

『…分かってる、大丈夫。あくまで威嚇って分かってるから』

自分に言い聞かせないと、うっかり頭を狙ってしまいそうだから。胸に手を置き深呼吸をする私の手に、彼の手が重ねられた。

「大丈夫、お前なら出来るさ。防弾ジャケット越しなら好きに狙って構わん…あの日のリベンジだ」

『…もちろん顔はアリよね？掠るくらい許されるわよね？』

「許される。あちらのスナイパーはあまり挑発しない方がいい…気が短い奴らだ」

『オッケー、スナイパー以外狙いで』

ようやく少し笑えるくらいには余裕が出てきた。そしてスコープにターゲットが映る。空気が打って変わって真剣なものになり、私たちはじっとライフルを構えたまま時を待つー。

「…お出ましだな」

事務所近くで集まりだす、黒い集団。間一髪のところで、間に合ったらしい仲間たちと一緒にいた少年が奴らの気を逸らしたらしい。少しの間奴らの動きが止まり、私は思わず口笛を吹いてしまった。

『ヒュウ…やるねlittle。タイミング合わせる、盗聴器狙い？』

「…ああ」

最低限の確認までした時から、私たちの間に言葉は消える。何やら揉めている様子のジンとベルモット…そしてじっと待つ事しばし、待ち望んだその時は来た。

「やっと会えたな…。愛しい愛しい…宿敵(こいびと)さん？」

『ハッ、遅いつっーの…』

秀一の放つ弾丸が、ジンの指先で摘まれた盗聴器を貫く。更には迎撃しようとしたそのライフルのスコープを700ヤード(この距離)で撃ち抜く事すら、彼には造作もない。あちらのスナイパーの弾は、私たちには届かない。私も合わせてジンの腹部や顔へ何発か撃ち込み、いくらか気分は晴れた。


「…幾分スッキリしたという顔だな？ベルモットにまで挑発したろ」

『だって、分かってても腹は立つもの』

確証はないが、見た限り彼女の言葉で恐らくジンを足止め出来ていたと判断出来ても…やはり親の仇には変わりない。どさくさに紛れ、彼女の顔スレスレに狙いを付けたのは当然バレていた。

「…結果的に目的は達成出来たからな、俺は目を瞑ろう」

『理解のある相棒で助かりまーす。私も人間なんだなって事で一つ』

完全に晴れたわけではないけれど、奴らにひと泡吹かせたのは気分が良い。組織に繋がる糸は、得たー。

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