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【番外編】11.そばに ページ23

少し落ち着いた様子の彼女を抱えて、俺の部屋の方が彼女の部屋よりも距離が近かったということもあり、自室に移動させる。



「……勝己さん」
「……あぁ」



俺の服を握りしめる彼女は、見ているだけで辛かった。ベッドにゆっくり彼女を下ろすと、座ったまま俯いて動かなくなる。

そんなAに気を使って、一人にさせてあげよう、と彼女に背中を向けると服を軽く引っ張られる。



「待って、行かないで……っ!」
「……っ、」



振り返った俺を涙目で見つめる彼女は、震えた腕で抱きついてきた。Aは、床に膝で立ちながら、俺の腰にしがみつく。



「ひとりでいるなんて、耐えられない」
「……悪かった」



考えてみれば、誰だってそうだろう。

“何も聞こえない”という、恐怖と絶望を味わえばきっと誰かに傍にいてほしいはずだ。



床がフローリングで冷たかったため、手を貸しながら一旦彼女をベッドの上に移動させる。

俺も座るように促され、真ん中辺りに腰かけると、彼女が俺に体を預けてきた。



「今だけでいいから、傍にいてほしい」
「……っ、あぁ」



そう言いながら、彼女は泣き出した。目が赤く腫れている。これ以上擦らないほうがいい、とAの両手を掴み腰から抱き寄せる。



「ごめん、ごめんなさい」
「……なんで謝んだよ」



Aに聞いても、答えてくれることはない。



「……」



静かになったため、寝てしまったのかと覗きこもうとしたとき、彼女が口を開く。



「……遅くなったけど、聞いてもらってもいい?」



縦に首を振り、彼女の話に耳を傾けた。



「……私ね、本当は“個性”なくなったの」
「っ、あぁ」
「実家に泊まるって嘘ついて、入院してたこともあった」
「……あぁ」
「馬鹿だよね。勝己さんには何も言わないで、結局耳まで聞こえなくなっちゃった」
「……っ、」



自分を悪く言う彼女を見ていられなくて、腕に力をこめる。



「……ずっと言えなかったけど、私勝己さんに名前で呼んでほしかった」
「……」



それを聞いて、ふと考えてみる。すると、学生時代は数回呼んだことがあるが、同居してから“1度も”本人に対して呼んだことがないことに気が付いた。



「でも、さっき最後に“A”って呼んでくれたような気がして、凄く嬉しかったんだよ」
「……そうか」



彼女の嬉しそうな顔を見て、名前なんていくらでも呼べたのに、と後悔の念に苛まれる。



何度呼んだって、もう意味はなかった。

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設定キーワード:ヒロアカ , 僕のヒーローアカデミア , 爆豪勝己   
作品ジャンル:アニメ
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√A(プロフ) - 真実さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです!頑張った甲斐がありました〜(笑) お気に入り登録もありがとうございました! (7月20日 11時) (レス) id: 6ffc153c88 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 哀切この上なくて、でもとても素敵なお話でした……! 久々に素晴らしい作品に出会えました、ありがとうございますっ…… (7月20日 1時) (レス) id: 645dfe253c (このIDを非表示/違反報告)
√A(プロフ) - けいさん» 最高だなんて、、そう言ってもらえて嬉しいです。そうですよね、、大好きな人との時間を大切に過ごしてくださいね。コメントありがとうございました! (10月7日 21時) (レス) id: 6ffc153c88 (このIDを非表示/違反報告)
けい - ずごい泣けました……涙が込み上げて来て最高でした。最後のほうはもう画面が見えなかったです。大好きな人の声が聞けないなんて私は耐えられないと思います。 (10月4日 21時) (レス) id: 0d0916fec7 (このIDを非表示/違反報告)
√A(プロフ) - でんぷんさん» 返信遅くなって申し訳ないです。ほんとですか!笑 そう言ってもらえて嬉しいです。コメントありがとうございました! (10月2日 19時) (レス) id: 6ffc153c88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:√A | 作成日時:2018年2月8日 22時

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