終わらない愛を君へ (ページ19)

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松村くんの役は、薫ちゃん演じる役の女の人に思いを寄せる会社の後輩役。

浮気の相談を受けてるうちに間違った方向に進んでしまうんだよね。

1番一緒に演技するだろう薫ちゃんとまだ話せてないという彼の腕を無理やり引いて、薫ちゃんに声をかける。

｢薫ちゃん。立川駿役の松村北斗。｣

北｢初めまして、松村北斗です。…その、挨拶いけなくてすいません｣

薫｢あ、米沢薫です！よろしくお願いします！｣

｢ごめんね薫ちゃん。この人極度の人見知りで…いた！｣

この人、無言でパンチ入れてきた。
酷いもんだ、挨拶するきっかけあげたと言うのに。

薫｢Aちゃん元々知り合いだったんですか？｣

｢うん、8年前？とかに共演したっきりだったけど｣

薫｢じゃあファンの方は喜びますね！久しぶりの共演だ〜って！｣

あ、そっか。

懐かしい雰囲気ですっかり忘れてたな。

映画の公開発表、ねぇ。

〇｢皆様お待たせしました！名札がある所の席にお座り下さい！｣

監督の隣の席に座って、薫ちゃんの言葉がもう一度頭に再生された。

“ファンの方は喜びますね！”

本当に、そうなのかな。

8年後の再会を喜んでもらえるものなのかな。

映画の公開発表は、いつだって嫌いだ。

私の名前が、1番SNSに拡がる瞬間だから。

今まで演じてきた役を前提に、自由に放たれる言葉の数々を、受け止めなきゃいけない瞬間だから。

映画の情報公開前に、唱えている“大丈夫。“は

いつも好きな人の声で再生されていたから

再会してしまった今、そのおまじないはどうしても使えなかった。