【妖怪ウォッチ1】永遠の夏に終止符を (ページ5)

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向かって道中ページ5

住宅街から急いで走って、そよ風ヒルズを通り抜ける。
少しだけ遠回りな道。だけど、海辺に向かいたいなら、こっちのほうがたぶん近い。
朝の涼しい風が、あたしの夏はまだ始まったばかりだって言ってくれているようだった。
でも、やっぱり抱いた≪違和感≫が心の中で反響して、変な気持ちにさせられる。
「あたし、何日夏休みを過ごしたんだろう。
ずいぶんと長いこと、夏休みが続いている気がする…」
日付感覚を忘れ、けっこう見ていなかったカレンダーの存在も思い出した。
帰ったらちょっと見ようかな…。

そして、歩きながら考えている間に、いつの間にかそよ風ヒルズとさくら中央シティをつなぐしおかぜトンネルへたどり着いていた。
―やっぱり、ここから来る潮風は気持ちいいし、懐かしい匂い。
いつもここを通るのが、いつしかクセになっていた。

そして、あの蜃気楼をもう一度見たい、という待ちきれない気持ちを抑えながら、あたしはトンネルを通り抜け、海辺へと近づいていった。

――――
「あたし、何日夏休みを過ごしたんだろう。
ずいぶんと長いこと、夏休みが続いている気がする…」

誰にも気づかれない朝の散歩―いや、自分は≪妖怪≫なのだから決して普通の人間には見えるはずはないのだが―をしていたら、どこからか近いところで少女の声が聞こえた。
どうも独り言のようだが…
誰も気づいていない、いや、人間であれば普通は気付くはずのない「永遠の夏」の事実に、気付いている人間がいる―
それだけでも不思議だった。
しかも、あの少女は妖怪が見えていないようである。
…あの人間なら、もしかすれば、あいつと自分の目的を果たすために協力してくれるかもしれない…
そう思い、少女を追いかけることにした。